2026年から始まった制度変更と企業実務への影響
2026年1月1日をもって、ベトナムでは 事業ライセンス税(Lệ phí môn bài) が正式に廃止されました。
この制度変更は、2025年に採択された 国会決議198/2025/QH15 に基づくものであり、ベトナムの税制および事業環境において一つの大きな転換点となっています。
本稿では、これまでの事業ライセンス税の役割を振り返りつつ、廃止後の現状と、在ベトナム企業・進出企業の実務にどのような影響が生じているのかを整理します。
事業ライセンス税とはどのような制度だったのか
事業ライセンス税は、ベトナムで事業活動を行う 法人および個人事業主に毎年課されてきた定額的な負担 です。
この制度の特徴は以下のとおりです。
- 法人の場合、主に 資本金額に応じて税額が区分 される
- 毎年1回、年初に納付義務が発生
- 企業の利益・損失に関係なく課税
- 事業を継続している限り、毎年必ず発生
金額自体は高額ではないものの、「事業をしているだけで毎年発生する固定コスト」として、国内外の企業にとって長年当たり前の存在でした。
廃止に至る背景
ベトナム政府および国会は近年、民間経済の成長を国家発展の重要な柱と位置づけています。
その中で問題視されてきたのが、事業開始・継続に伴う制度的な負担の多さ でした。
事業ライセンス税は、
- 収益が出ていない企業にも一律に課される
- 新設企業や中小企業にとって心理的な負担となる
- 行政・会計実務上の管理コストが発生する
といった点から、「事業環境改善の観点では必ずしも合理的ではない制度」として見直しの対象となっていました。
こうした背景を踏まえ、国会決議198/2025/QH15では、事業活動そのものに対する定額的な負担を撤廃する という明確な方針が打ち出されました。
2026年1月1日からの制度変更
国会決議198号に基づき、2026年1月1日以降、事業ライセンス税は徴収・納付ともに行われなくなりました。
この廃止は一時的な免除ではなく、制度そのものを終了させるものであり、
- 法人
- 支店・駐在員事務所
- 個人事業主
を含む、すべての対象者に適用されています。
その結果、2026年以降は、事業ライセンス税に関する申告・納付義務自体が存在しない状態 となっています。
企業実務への影響
①:固定コストの消滅
廃止後、企業にとって最も分かりやすい変化は、毎年必ず発生していた固定的な支出がなくなったこと です。
特に、
- 複数の法人・拠点を保有する企業
- 投資用・準備段階の法人を維持している企業
にとっては、コスト面だけでなく「維持のために必ず必要だった支払い」がなくなった点は大きな変化といえます。
②:税務・会計業務の簡素化
事業ライセンス税は金額が小さい一方で、以下のような管理業務を伴っていました。
- 毎年の申告・納付スケジュール管理
- 資本金変更時の税額区分の確認
- 税務調査時の確認対象
制度廃止後は、これらの 業務自体が不要 となり、会計・税務実務の簡素化につながっています。
これは、管理部門の負担軽減という点でも無視できない効果です。
新規進出・起業環境への影響
すでに制度が廃止された現在、ベトナムでの会社設立や事業開始を検討する企業・個人にとって、「設立しただけで毎年必ず支払う税金がない」 という状況が実現しています。
これは、以下のような点で事業環境の改善につながっています。
- 起業時の心理的ハードルの低下
- 事業計画における固定費の削減
- 投資判断時の制度リスクの軽減
特にスタートアップや小規模事業者にとっては、象徴的な制度変更といえるでしょう。
2025年分までの取り扱いとの違い
補足として重要なのは、2025年分までの事業ライセンス税は従来どおり有効であった という点です。
廃止はあくまで2026年から適用されており、過去分が遡って無効になるものではありません。
現在は、完全に制度が終了した状態であり、今後新たにこの税が復活する予定も示されていません。
他の制度改革との関係
事業ライセンス税の廃止は、単独の施策ではなく、
- 行政検査・監督の抑制
- 個人事業主制度の見直し
- 中小企業・スタートアップ支援策
といった、民間経済を中心とした制度改革の一環です。
ベトナムは「事業を行うこと自体にコストを課す制度」から、「実態に応じた課税・管理」へと明確に舵を切っています。
まとめ
2026年1月1日をもって、ベトナムの 事業ライセンス税(Lệ phí môn bài) は制度として正式に廃止されました。
この変更は、単なる税目削減ではなく、「事業を行うだけで発生する固定的な負担」をなくすという制度思想の転換を示しています。
従来、事業ライセンス税は企業の利益や実態に関係なく毎年発生しており、赤字企業や新設法人にとっても避けられないコストでした。
廃止により、企業は毎年の固定費を削減できるだけでなく、税務・会計実務の簡素化という実務面でのメリットも享受しています。
特に、複数法人や複数拠点を保有する企業、新規進出や事業拡大を検討する企業にとっては、「保有しているだけで発生するコスト」がなくなった意義は小さくありません。
また、この制度変更は、行政手続の簡素化や中小企業・スタートアップ支援といった、民間経済重視の政策と一体で進められています。
事業ライセンス税の廃止は、ベトナムがより事業しやすい環境へ移行していることを示す象徴的な施策といえるでしょう。
今後は、この制度変更を前提としつつ、引き続き関連法令や運用動向を注視しながら、より安定的かつ効率的な事業運営を進めていくことが重要となります。
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