ベトナム発見された新たなコロナ変異株について

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ベトナム進出サポーターズを運営しています(株)MEIKEI 代表取締役の谷口です。本項は、私が日々感じるベトナムに関連する情報やニュースなどについて綴るブログページです。

先日、ビジネスを通してベトナムと日々関わりを持っている弊社にとっても、非常に残念なニュースがありました。

これまでCOVID-19(コロナウィルス)の封じ込めに成功した国の一つとして、「アジアの優等生」などと日本のメディアでも大々的に紹介されて来たベトナム国内で、現在コロナウィルスの感染が広まっています。ベトナムにある58の省と5つの中央直轄市のうち30の省・市で新型コロナウイルスの感染者が確認されているのですが、さらにその中で、新たな変異種と言えるコロナ変異株が発見されたのです。

ベトナム政府による新変異株に関する公表

ベトナム政府・グエン・タン・ロン保健相は529日朝、「COVID-19を予防および制御するための関係者会議」の中で、新たなコロナウィルスの変異株の存在について公表しました。

ベトナムは日本のように4面を海に囲まれた完全な島国ではなく、コロナウィルス陽性の外国人による不法入国などに悩まされながらも海外からの入国者には十分な注意を払い、入国の事前申請制・強制隔離、国内での行動申告(あるいは監視)など、水際対策も徹底的に実施することで、国内での市中感染が起きても早い段階から制御して来ましたが、先月(5月)の1ヶ月間で、全国の総感染者数が2倍になる程の大規模な市中感染が、4月下旬からベトナム北部地域を中心に、中部・南部などで急速に拡大しています。

その中で日本でも現在脅威となっている「インド型の変異株」、そして「イギリス型の変異株」の両方を併せ持つハイブリッド変異株がベトナム国内で発見されたと、ロン保健相が明らかにしました。

ベトナムで発見されたハイブリッド変異株とは?

ベトナム保健省によると、これまでベトナムでは「B.1.222B.1.619D614GB.1.1.7B.1.351A.23.1B.1.6172」の合計7種類のコロナウイルスが発見されており、イギリス型はB.1.1.7、インド型はB.1.6172、共に変異株ですが、今回公表されたハイブリッド変異株は両変異株の特徴を合わせ持ち、ウイルス濃度が非常に速く増加する特徴を持つことから伝播力が強く、従来型よりも容易に、そして短期間での感染を引き起こす特徴があるとされています。

工業団地での感染が深刻化

1ヶ月で感染者数が倍増したベトナム国内で最も注意すべき感染地域は、日本企業も多く投資する「工業団地」での感染であり、日本の(世界的に有名な)大手精密機器メーカーも進出している北部バックニン省、その近隣のバックザン省では、工業団地からまた次の工業団地への感染が相次いでいます。

とある工業団地では、5000人弱の社員のうち2割の1000人近くの感染者が出た製造メーカーもあり、社員同士を通じで感染が拡大した企業や工業団地では、経済活動よりも感染防止を優先として完全操業停止する企業も出て来ました。また現地の日系企業においても、エンドユーザーの大手メーカーが操業停止することで、そのメーカーへ部品を販売する各部品サプライヤーも事業停止・縮小・売上減少などの影響を受けています。

工業団地で感染が広がる背景として、工業団地内の各企業に務める従業員は、(社員寮を持つ企業もありますが)多くは従業員個人が団地周辺の村などで部屋を借り、同じ会社の同僚だけでなく、同工業団地内の他社従業員とも3-6人程度でルームシェアして暮らしており、そういった日常から感染が拡大しているとも言われています。

ベトナムでは現在輸入ワクチンが少しずつですが普及しており、前述のバックニン省に進出する日本企業各社でも、ベトナムワクチン基金へ企業が寄付(負担)した上で、イギリス製ワクチンの接種を全社員へ無償で実施する動きも出て来ました。


ロン保健相は、今回新たに発見されたイギリス型とインド型のハイブリッド変異株の存在を公に明らかにした「COVID-19を予防および制御するための関係者会議」の中でも、今後同様の特徴を持つ変異種が世界各国で確認されることを大いに懸念されていました。

日本政府は、ベトナムでハイブリッド変異株が出現したことにより、まずベトナムから入国を強化しましたが、ベトナムのみならず、ベトナム以外の地域からでも新たな変異株が入ってくる可能性は否定することができません。

ベトナム政府をはじめ、これまでコロナ対策に成功して来た国が実施しているような素早い対応且つ徹底した水際対策が必要な気がします。

オリンピックも控え、日本が厳しい入国対策措置を実施することで、海外からの日本の印象などが悪くなることを懸念しているかもしれませんが、この際体裁は気にしている場合ではありませんね。海外からどう思われようと日本国と日本国民を守るためにも徹底した水際対策実施に期待したいと思います。