ベトナム、社会保険手帳・健康保険証の電子化を規定
2026年2月3日、ベトナム財務省は通達第09/2026/TT-BTC号を公布しました。本通達は、社会保険手帳および健康保険証の電子版の作成・利用に関する制度を定めたものであり、ベトナムにおける社会保険制度のデジタル化を推進する政策の一つと位置付けられています。
ベトナム政府は近年、行政手続きの電子化やデジタル政府の推進を重要な国家政策として進めており、社会保険制度においてもデータベース化やオンライン手続きの整備が進められてきました。今回の通達は、こうした政策の流れの中で、社会保険関連の証明書を電子形式で作成・管理する仕組みを明確に定めたものです。
これまでベトナムでは、社会保険手帳や健康保険証は紙の証明書として発行され、労働者自身または企業が保管・管理する形が一般的でした。しかし紙の証明書には、紛失や破損のリスク、手続きの煩雑さなどの課題がありました。本通達では、これらの証明書を電子データとして管理する仕組みを整備することで、社会保険制度の利便性や効率性の向上を図ることを目的としています。
概要
- 法令名:通達第09/2026/TT-BTC
- 公布日:2026年2月3日
- 発行機関:ベトナム財務省
- 主な内容:社会保険手帳(BHXH)および健康保険証(BHYT)の電子版の作成・利用に関する規定
- 施行日:2026年2月3日
社会保険手帳・健康保険証の電子化
通達第09/2026/TT-BTCの最も重要なポイントは、社会保険手帳および健康保険証を電子版として作成し、デジタルデータとして管理する制度を導入することです。
社会保険手帳(Sổ bảo hiểm xã hội)は、労働者が社会保険制度に加入していることを証明する重要な書類であり、保険加入期間や保険料の納付状況などが記録されています。また、健康保険証(Thẻ bảo hiểm y tế)は、医療機関で診療を受ける際に健康保険の適用を受けるために必要な証明書です。
今回の通達では、これらの証明書を電子データとして作成し、国家保険データベースと連携して管理する仕組みが規定されています。電子版の社会保険手帳や健康保険証には、従来の紙の証明書と同様に、加入者の基本情報や保険番号、保険加入履歴などの情報が含まれることになります。
電子化された保険証は、中央のデータベースに登録され、必要に応じてオンラインで確認することができるようになります。これにより、社会保険情報の管理や確認がより効率的に行えるようになることが期待されています。
電子保険証の利用方法
電子版の社会保険手帳および健康保険証は、主に次のような電子システムを通じて利用されることが想定されています。
- 国家電子IDアプリ(VNeID)
- 社会保険アプリ(VssID)
- 電子データ管理システム
- 電子通知やオンライン確認システム
例えば、労働者が医療機関を受診する場合には、スマートフォンのアプリや電子証明を提示することで、健康保険証として利用できる仕組みが整備される予定です。また、社会保険に関する手続きや情報確認についても、電子データを活用したオンライン手続きが進められることになります。
こうした仕組みにより、紙の証明書を常に持ち歩く必要がなくなり、医療機関での受付や行政手続きの際の確認作業がより簡便になると考えられています。
適用対象
本通達の適用対象は、社会保険制度および健康保険制度に関係する幅広い主体です。主な対象は以下の通りです。
- 社会保険加入者
- 健康保険加入者
- 失業保険加入者
- 企業(雇用主)
- 社会保険機関
これらの関係者は、電子化された保険証の制度のもとで、社会保険情報の登録や更新、確認などを行うことになります。
ただし、国防省や公安省が管理する特定の保険制度については、本通達の適用対象外とされています。これは、これらの機関が独自の保険制度や管理体制を持っているためです。
電子化によるメリット
社会保険証の電子化には、さまざまなメリットが期待されています。
まず、紙の証明書の紛失や破損といった問題を減らすことができる点が挙げられます。従来は、社会保険手帳や健康保険証を紛失した場合、再発行手続きが必要となり、一定の時間や手間がかかる場合がありました。電子化によってデータとして管理されることで、こうした手続きの負担が軽減される可能性があります。
また、行政手続きの効率化も重要なポイントです。電子データを活用することで、社会保険に関する情報の確認や更新を迅速に行うことができるようになり、行政機関だけでなく企業側の事務負担の軽減にもつながると考えられています。
さらに、国家データベースとの連携により、社会保険制度の管理の透明性や正確性が向上することも期待されています。これにより、社会保険制度全体の運用の効率化や信頼性の向上につながる可能性があります。
企業への影響
社会保険制度は企業の労務管理とも密接に関係しているため、今回の電子化の動きは企業側にも一定の影響を与える可能性があります。
例えば、企業が従業員の社会保険加入手続きを行う場合、今後は電子システムを通じた申請や情報管理がより重要になると考えられます。また、従業員の保険情報の確認や変更手続きについても、電子データを活用した手続きが中心となる可能性があります。
ベトナムでは近年、行政手続きのオンライン化やデジタル政府の推進が進められており、今回の通達もその一環として位置付けられます。企業としても、こうした制度変更の動向を把握し、電子手続きへの対応や社内の管理体制の整備を進めていくことが重要になるでしょう。
まとめ
通達第09/2026/TT-BTCは、社会保険手帳および健康保険証の電子化を規定した法令であり、ベトナムの社会保険制度のデジタル化を進めるための重要な制度の一つです。本通達により、社会保険に関する証明書は電子データとして作成・管理され、アプリや電子システムを通じて利用できる仕組みが整備されることになります。
電子化によって行政手続きの効率化や利便性の向上が期待される一方で、企業や労働者にとっても電子手続きへの対応が求められる可能性があります。ベトナムでは今後も行政のデジタル化が進むとみられており、社会保険制度についても段階的に電子化が進められていくと考えられます。
ベトナムで事業展開を行う企業にとっては、こうした社会保険制度の変化を把握し、労務管理や手続きの面で適切に対応していくことが重要になるでしょう。なお、関連するガイドラインや追加の法令が公布された場合には、制度の運用内容がさらに具体化される可能性もあるため、今後の法令動向についても継続的に確認していく必要があります。
また、関連する新たな法令や運用の詳細が公表された場合には、本サイトでも引き続き最新情報をお伝えしていきます。
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