ベトナムの個人所得税におけるポイント
(居住者・非居住者の定義、課税範囲、所得税率、所得税計算方法、所得控除)
ベトナムの個人所得税(Thuế thu nhập cá nhân : 略称 TNCN)について解説致します。個人所得税は、ベトナム現地拠点で勤務するベトナム人従業員はもちろんのこと、日本人駐在員、日本人現地採用人材、日本からの短期出張者にも関わる税です。
ベトナム個人所得税を考える上でのポイント5選、以下の通りです。
ベトナム個人所得税のポイント
1. 居住者と非居住者の違いは?
2. 課税範囲
3. 所得税率
4. 所得税の計算方法
5. 所得控除
1. 居住者・非居住者の違いは?
【居住者とは?】
ベトナムの政令上で定める「居住者」とは、以下の2つの要件を満たす者のことを言います。
① 年間の半数以上をベトナムに滞在している
1-1. 暦年のうちベトナムに183日以上滞在した者
1-2. ベトナム入国日から連続する12ヶ月間の間に、183日以上ベトナムに居住した者
② ベトナムの恒久的居所を有している
2-1. 一時滞在許可証(レジデンスカード )を所有している者
2-2. 課税年度において計183日以上、居所の賃貸契約等を締結している者
(アパートかホテル、契約当事者が法人か個人かは問わない)
【非居住者とは?】
上述の居住者要件を満たさない者は、全て「非居住者」扱いとなります。
2. 課税範囲
ベトナム個人所得税の課税範囲ですが、居住者・非居住者の違いによって変わってきます。
– 居住者 : 全世界所得
– 非居住者 : ベトナム国内源泉所得のみ
全世界所得とは… ベトナムの居住者となる方が、ベトナムで得る所得のみならず、そのほかの国で得た所得も含めた全ての所得のことを言います。
ベトナムは全世界所得課税方式を採用していますので、例えば日本人駐在員であれば、ベトナム国内の給与だけでなく、駐在期間中に日本本社から日本の銀行口座へ支払われている日本給与に対しても(もちろん日本だけでなくそのほか全世界で得ている給与があれば全て対象)、個人所得税の課税範囲となります。
3. 所得税率
ベトナム個人所得税の税率ですが、こちらも納税義務を負う者が、居住者か、それとも非居住者かによって変わってきます。
– 居住者 : 累進課税方式(*以下の表です)
– 非居住者 : 一律で20%
居住者は、上表の税率に沿って、最小 5% – 最大35%が課税されます。
ベトナム国内源泉所得であっても、日本人駐在員が最小5%課税ということはありませんので、
実質課税される税率は、30%,35%あたりでしょうか。
4. 所得税の計算方法
ベトナム個人所得税の計算方法は、以下の通りです。
① 課税所得 = 総所得 – 非課税所得*1
② 所得控除 = 基礎控除 + 扶養控除 + 保険料控除
個人所得税 = (①課税所得-②所得控除)× 累進課税率
*1: 非課税所得(一例)
・駐在員が通勤や業務で利用する通勤車レンタル代
・帯同する子供の就学先へ支払う教育費(学費以外の費用は課税所得となる場合があります)
・ベトナム赴任時の赴任手当
・駐在員の一時帰国休暇の往復飛行機代(年一回)
これらの非課税所得ですが、労働契約書や社内規定の中で明記していない場合、非課税所得と認められないケースがありますのでご留意ください。
5. 所得控除
ベトナム個人所得税における所得控除は、以下の通りです。
・ 基礎控除 : 900万VND/月
・ 扶養控除 : 360万VND/月(扶養控除の定義はこちらのページにて)
・ 保険料控除(国家強制社会保険、健康保険など)
留意点
法定代表者の赴任前(出張中)の扱いについて:
「非居住者」は課税義務はないとお考えの進出企業様もいらっしゃいますが、非居住者も一律で20%課税されますのでご留意ください(但し、全世界所得でなく、ベトナム源泉所得に対して20%です)
例えば、新たに土地使用権を購入して、自前の工場建設して進出する企業様がいらっしゃったとして、その期は駐在員を正式に赴任させず、(いずれ現地の法定代表者となる駐在員が)工場建設の進捗度合い確認や市場調査を目的に、出張ベースで現地に入るとします。この場合、この駐在員はまだ日本の居住者であり、ベトナムでは非居住者であるものの、ベトナムでは20%の課税義務が発生することになります。
(本来でしたら)短期出張者免税申請という短期出張で訪れる非居住者に対する免税を申請できますが、実際には法定代表者となる出張者に対しては、短期出張者免税申請が認められないケースが一般的ですので、ベトナムでもらうであろう現地所得を決定して、その所得に対して、ベトナム現地に出張した日数を掛けて(日割りで)所得税を計算して申告することになります。ご留意ください。
短期出張者の扱いについて:
前項でも少し出ましたが、短期出張者も本来であれば納税義務が発生します。 工場の立上げ時はもちろんのこと、現地法人立上げ後も、日本本社からエンジニアや品質管理、営業などの専門的な日本人社員が頻繁にベトナム法人へ出張に来ることになりますが、このような出張者も現地へ出張した日数に対して日割りにて所得税の課税義務がありますが、(日越租税条約によって)事前に短期出張者申請を出すことによって免除措置が認められます。この出張者が将来ベトナムに赴任する法定代表者の場合、実務上「短期出張者免税申請」は通らないことが一般的ですので、ご留意ください。
(短期出張者社の免税措置要件)
・ 暦年の総滞在日数が183日未満であること
・ 出張者の給与などは、日本法人が支払っていること
(ベトナム現地法人が給与や出張者に対するその他の費用を一切負担していないことが前提です)
*滞在日数の計算上、出入国の日はそれぞれ1日と考えます。
以上、ベトナムのおける個人所得税のポイントについて、ご紹介させて頂きました。
次のページでは、「ベトナム日本人駐在員に掛かる社会保険、所得税」について詳しくご説明致しております。宜しければ、合わせてご覧いただけますと幸いです。
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