【2021年度版】ベトナム中古機械・中古設備輸入規制について

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– ベトナムで輸入可能な中古機械・中古設備-

対象貨物、年数制限、輸入条件、輸入申請書類など

ベトナムへ進出する製造企業様の中には、設立した現地法人に中古機械・中古設備を導入して、投資金額を少しでも抑える試みをされることはよくあり、当社も「ベトナムに中古設備を持っていける進出したい」というご相談をお受けすることが非常に多いです。

ですが、ベトナムではその中古機械・設備の輸入に対して厳しい輸入規制が掛けられています。

2012年から関連法令(政府通達:571/TTG-KTTH, 省通達: 2527/TB-BKHCN)が細かく整備され、中古機械設備の輸入と国内への流通に対して規制が敷かれて来ました。当時、中国から輸入する中古機械設備が厳しく制限され、現地に進出していた日本企業も中国のグループ会社や設備会社から中古機械設備をベトナムへ輸入する際に大きな影響を受けました。

以降、2013年-2015年に掛けて、中古機械・中古設備輸入制限関連政令の細かな取り扱い、対象地域拡大・対象業界、輸入条件などが、いくつかの通達やオフィシャルレターで規定されましたが、

ベトナムでは現在も、原則、中古機械・中古設備は輸入できません。

以前は、輸入規制の対象や輸入条件なども明確化されておらず、関連機関や関連事業者が実務的に困惑する状況もしばしばありました。

現地へ進出している外資系企業や、現地に拠点を置いて進出企業を支援する各国の公益経済団体、在外業界団体などから規制緩和の要望が上がったこともあり、(2016年に)一部の中古機械・中古設備のベトナムへの輸入を(条件付きで)認める詳細の規定が出されました。

2016年7月1日施行の科学技術省 通達「中古機械・設備・技術ラインの輸入規定」: 23/2015/TT-BKHCN(2015年11月公布)がこれに当たるもので、さらに2019年6月15日には、この通達内容を一部変更した改正規定(首相決定: 18/2019/QD-TTg)が施行されました。

本項では、2019年の最新規定を元に、(条件付きで)ベトナムに輸入が認められる中古設備・中古機械の該当貨物、輸入条件や申請方法などについて、解説させて頂きます。

*これより以下の本文では、(2016年)科学技術省通達: 23/2015/TT-BKHCNを「2016年 旧規定」、(2019年)首相決定: 18/2019/QD-TTgを「2019年 新規定」と記載いたします。



【本項のテーマ】

1. (条件付きで)輸入可能な中古機械・中古設備とは?
– 1-1. 対象貨物は?
– 1-2. 製造年齢10年以内
– 1-3. 製造年齢の定義(年単位で考慮)
– 1-4. 対象業界は?
– 1-5.「中古機械設備」と「中古技術ライン」という考え方

2. 「中古機械設備」と「中古技術ライン」の輸入条件
– 2-1. 中古機械設備の輸入条件
– 2-2. 中古技術ラインの輸入条件

3. 「中古機械設備」と「中古技術ライン」の輸入申請書類
– 3-1. 中古機械設備の輸入申請書類
– 3-2. 中古技術ラインの輸入申請書類

4. 年数制限(製造年齢)を超えた機械設備の嘆願措置 
– 4-1. 嘆願方法
– 4-2. 嘆願申請書類
– 4-3. 嘆願審査の手順

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1.(条件付きで)輸入可能な中古機械・中古設備とは?

そもそも中古機械・設備と一言でいっても、様々な業界の様々な機械・設備が存在します。
「2019年 新規定」によって、ベトナムで輸入が認められている中古機械設備は、どのようなものがあるのでしょうか?

1-1. 対象貨物は?

中古機械・中古設備の中で、(輸入禁止品に該当するものを除いて)HSコード(輸出入統計品目番号):84類・85類の属するアイテムが、(条件付きで)輸入が認められる本規定の対象となります。

*HSコードについては、こちらの日本国税関の公式サイトにてご確認ください。

この対象貨物のHSコードは、「2016年 旧規定」→「2019年 新規定」へ至る中でも、特に内容変更はありませんでしたが、「2019年 新規定」の第1条の2項において、以下に該当する場合は、(84類・85類の貨物であっても)規定適応対象外と明記されました。

  •  積み替え貨物
  •  国境間輸送貨物
  •  商業用の一時輸入&再輸出貨物
  •  その他の一時輸入&再輸出貨物
    (委託加工契約に基づく貸与機械の輸入、投資プロジェクト用の生産・施工用機械は除く)  
  •  外国企業との修理・メンテナンスサービス契約上の貨物
  •  輸出加工区、保税区内の企業間取引および、それを国内企業への売却・譲渡する場合の貨物
  •  委託加工契約に伴い(外国パートナーから貸与されていたもので)契約終了後に譲り受ける場合、異なるファイナンシャルリース契約へ移管する場合、委託加工終了後に再輸出せずにそのまま国内企業が保持する場合(使用目的の変更)、委託加工を受託している企業から他の委託加工を受託している企業へ移管する場合
  •  国内生産出来ない上、科学研究・技術開発や各省庁が安全保障・国防に用いるもの
  •  製品商品品質法に従って各省庁から公布されている第2グループ製品リスト内の貨物
    (安全性に悪影響を及ぼす可能性のあるもの) 
  •  各省庁にて管理する、特定の分野の貨物

*また、HSコード8480である「金型」は、84類に属していますが、「2019年 新規定」施行の翌月(2019年7月27日)に、科学技術省よりある進出企業に対して出されたオフィシャルレター(2126/BKHCN-DTG)の中で、金型は規定対象外とする見解が示されました。


1-2. 製造年齢10年以内

前述のHSコードの対象範囲に加えて、輸入可能な原則的な条件として、「設備年齢」が定められています。

84類・85類のアイテム中でも、原則、設備年齢10年以内(製造から10年を超えていない)中古機械・中古設備のみが輸入を認められているのです。

ただし、「2019年 新規定」では、機械加工分野、木材生産/木材加工分野、における一部の中古機械・中古設備の設備年齢規定が 10年間→20年以内(一部15年以内) に緩和されました。

設備年齢20年以内に緩和された対象設備は、「2019年 新規定」の中で附則資料①として添付されていますが、以下の18項目となります。

Used machinery 

1-3. 製造年齢の定義(年単位で考慮)

「2019年新規定」の附則資料①(特定分野の機械・設備の設備年齢)内でも明記されていますが、製造年齢の算定式は、輸入年から製造年を差し引いて算出します。

月単位は考慮せず、年単位で考えますので、(例えば)2021年12月輸入 – 2011年1月製造 = の場合は、10年11か月と11ヶ月間超過していますが、(年単位で見ると問題ありませんので)このような中古機械設備も、適応対象となります。

1-4. 対象業界

「2019年 新規定」第4条の3項に掲げる原則的な取決めとして、

3. Chỉ cho phép nhập khẩu máy móc, thiết bị, dây chuyền công nghệ đã qua sử dụng phục vụ trực tiếp cho hoạt động sản xuất của doanh nghiệp tại Việt Nam.

「ベトナムにおける企業の生産活動に直接用いる中古機械・設備・技術ラインの輸入しかみとめない」との項目があり、販売や賃貸目的で輸入する商社などの非製造事業者は規定対象外となっております。

1-5. 「中古機械設備」と「中古技術ライン」という考え方

本項でも特に大切な内容です。

「2019年 新規定」における「中古機械・中古機械」の定義は、機械設備そのもの(単体)である「中古機械設備」と、一定の場所に設置、接続された機械・設備・ツール・デバイスの一環システムである「中古技術ライン」の2つに分類されています。

この考え方は、「2016年 旧規定」でも明記されていたものの、それぞれの輸入条件などは区別化されておりませんでしたが「2019年 新規定」に於いては、各々の輸入条件が条項を分けて定められたことにより「中古機械設備」と「中古技術ライン」2つの事柄が具体的に区別されました。

2.「中古機械設備」と「中古技術ライン」の輸入条件

「中古機械設備」と「中古技術ライン」の輸入条件は、以下の通りです。
(それぞれ 2019年 新規定の第6条と第5条にて定められています)

 2-1.中古機械設備の輸入条件

  •  製造年齢が10年を超えていないこと。
    (ただし、本項1-2でも定める製造年齢が15,20年に緩和された18項目は緩和年数までは対象です)   
  • 安全性、省エネ、環境保護に関するベトナム国家技術基準(QCVN)に適合し製造されていること。(QCVNが存在しない技術ラインの場合は、安全、省エネ、環境保護に関するベトナム国家規格(TCVN)又はG7諸国と韓国の国家基準に適合して製造されていること)

 2-2. 中古技術ラインの輸入条件

  • 安全性、省エネ、環境保護に関するベトナム国家技術基準(QCVN)に適合し製造されていること。(QCVNが存在しない技術ラインの場合は、安全、省エネ、環境保護に関するベトナム国家規格(TCVN)又はG7諸国と韓国の国家基準に適合して製造されていること)
  •  設計上の生産能力、または効率性に対して、残存能力(一定時間に技術ラインによって生み出される製品数より算出)が85%以上あること。
  •  原料消費数、エネルギー消費数が設計上の数値より15%を越えていないこと。
  •  技術ラインで用いられている技術が「技術移転法」の補足政令 : 76/2018 / ND-CP内で定める技術移転禁止リスト、技術移転制限リストに該当しないこと。
  •  技術ラインで用いられている技術が、経済協力機構(OECD)加入国の(少なくとも3カ国以上の)製造拠点にて使用されていること。

※ 本項 項目1の1-2で、設備年齢10年以内対象と解説致しましたが、「技術ライン」に関しては、製造年齢の制限は設けられておりません。

3.「中古機械設備」と「中古技術ライン」の輸入申請書類

「中古機械設備」と中古技術ライン」の輸入申請書類は、以下の通りです。
(それぞれ 2019年 新規定の第8条と第7条にて定められています)

*通常の輸入通関手続きで必要な船積み書類(B/L・インボイス・パッキングリスト等)とは別に、以下の資料の提出が必要です。

 3-1.中古機械設備の輸入申請書類

  •  企業登録証明書(ERC)  の写し
  • (製造メーカー発行の)製造年証明書、またはG7諸国+韓国の中で製造された機械については、当該国の基準で製造されたことを証明する証明書(領事認証、ベトナム語翻訳が必要)
  • ベトナム政府(科学技術省)が承認・指定する各検査機関の証明書(鑑定書)
    (ベトナムの港へ到着日の6か月以内に発行されたものに限る)


    *鑑定書は、G7諸国+韓国の中で製造されたことを証明する(メーカー発行の)証明書が入手できない場合、
    またはG7諸国+韓国で製造された機械設備でない場合のみ提出が必要。

 3-2.中古技術ラインの輸入申請書類

  • 企業登録証明書(ERC)  の写し
  • ベトナム政府(科学技術省)が承認・指定する各検査機関の証明書(鑑定書)
    (ベトナムの港へ到着日の6か月以内に発行されたものに限る)

中古機械設備と中古技術ラインを鑑定する各検査機関は、ベトナム国内外に存在し、科学技術省(および関連省庁)によって承認された機関である必要があります。

各検査機関の情報は、こちらのベトナム科学技術省公式サイトにて、公開されています。

日本の検査機関であれば、日本海事検定協会などが有名です。中古機械設備と中古技術ラインの輸入に際して、鑑定が必要な場合は、弊社でも指定検査機関をご紹介可能ですので、お気軽にご相談ください。

4. 年数制限(製造年齢)を超えた機械設備の嘆願措置

また年数制限(製造年齢)が規定されている「中古機械設備」の輸入において、既定の10年(一部15年,20年)という条件を満たしていない場合でも、輸入が認められる(その可能性がある)方法があります。

条件として、生産能力または効率性が設計上の数値に対して残存85%以上の能力がある、尚且つ、原料消費数・エネルギー消費数が(設計上の数値より)15%を越えない場合にのみ、ベトナム科学技術省に対して、事前に「嘆願申請」を行うという方法です。

この嘆願方法が「2016年 旧規定」から「2019年 新規定」への変更点の中で、最も大きな変更であったと言っても過言ではありません。

 4-1. 嘆願方法

嘆願方法は、「2019年 新規定」の第9条の第1項において定められています。

これまでは、新規投資及び投資拡大時に限り、法人登記を承認する投資計画省(事業登録管理局)などへの投資認可機関に対して、設備リストと共に申請を行う必要がありました。

年数制限を超えているものの、必ずベトナムでの事業活動(製造活動)に必要であると説明した上で、承認を得る必要あありましたが、「2019年 新規定」に於いては、投資認可機関への申請は不要となり、原則、ベトナム科学技術省(MOIST)へのみの嘆願で済むようになりました。

合わせて嘆願申請必要書類や嘆願審査の手順が明確化されたことも大きな変更点ですが、何より新規投資及び投資拡大の時期以外においても、いつでも嘆願できるようになったことは、「2019年 新規定」の中でも特にインパクトのある内容でした。

*2021年現在、法人登記時(IPA/IRC/ERC申請時)において、事業で使用する生産設備リストも求められる地域がほとんでですが、 これは「年数制限超過設備の嘆願」に関係はなく、単に投資認可機関へ提出するためのものです。
年数制限を超えた機械設備がリスト内にあれば、指摘やベトナム科学技術省(MOIST)への嘆願を促されることがあります。

嘆願方法として、ベトナム科学技術省(MOIST)での窓口申請またはオンライン申請があります。
(郵便申請も規定の中で記載がありますが、本項では省略致します)

 4-2. 嘆願申請書類

嘆願申請書類は、「2019年 新規定」の第9条の第2項において定められています。 (以下の3点)

  •  指定の輸入許可申請フォーム (2019年 新規定の添付されている附則資料②)
  • 企業登録証明書(ERC)  の写し
  • ベトナム政府(科学技術省)が承認・指定する各検査機関の証明書(鑑定書)
    (ベトナムの港へ到着日の6か月以内に発行されたものに限る)

 4-3. 嘆願審査の手順

嘆願審査の手順は、「2019年 新規定」の第9条の第3項において定められています。

 大きく分けて以下の4手順です。

【嘆願審査手順】

① 申請者 → 科学技術省
 前述の申請書類を科学技術省へ提出する。
(窓口申請)不備があれば、申請者に対して申請資料が返却され、修正・補填などの指導があり、その後再提出する。
(オンライン申請)不備があれば、申請受領から8営業日以内に、申請者に対し修正・補填などの通知を行う。

② 科学技術省 → 関連省庁・専門家
 関連省庁、専門家へ問い合わせ
不備なく申請を受領してから2営業日以内に、科学技術省は関連省庁や(必要であれば)専門家の意見をもらい申請可否について協議する。

③ 関連省庁・専門家 → 科学技術省
 ②の問い合わせに対する返答
科学技術省から問い合わせを受けた関連省庁・専門家は10営業日以内に、科学技術省へ意見をフィードバックする。

④ 科学技術省 → 申請者
 申請者へ審査結果を通知
関連省庁・専門家からの回答を受けてから3営業日以内に、科学技術省は申請者に対して、審査結果(輸入可否)を書面にて回答する。(輸入不可の場合は、理由を明確に通知すること)

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以上、「ベトナム中古機械設備・中古技術ラインの輸入制限」について、解説させて頂きました。

弊社にも中古機械設備のベトナムへの輸入については、お客様からもよくお問合せ頂きますが、「2019年 新規定(首相決定 : 18/2019/QD-TTg)」が施行されたことにより、中古機械設備の輸入条件や輸入申請方法、関係機関やそれぞれに責任などが明確化され、以前に比べても申請しやすくなったと感じております。

何かお困りのことやご質問など御座いましたら、ぜひ当社へもお気軽にご相談くださいませ。



また本項と合わせて、以下の記事もよく閲覧頂いています。 皆様のベトナム進出のご参考にして頂けますと幸いです。