ベトナム特別消費税(SCT)改正の実務対応

政令360/2025/NĐ-CP・通達158/2025/TT-BTCの概要と企業への影響 

2025年12月31日、ベトナム政府は「Nghị định 360/2025/NĐ-CP(政令360号)」を公布し、2026年1月1日付で施行しました。本政令は、2025年に可決された改正特別消費税(SCT:Special Consumption Tax)法について、その具体的な運用ルールを定めた施行政令です。
2026年から適用された新たな特別消費税制度をめぐっては、課税対象の範囲や税務手続きの実務対応について、不安や疑問を抱く企業も少なくありません。

こうした中、政令360号の公布と同日に、財務省より「Thông tư 158/2025/TT-BTC(通達158号)」が発行され、申告・控除・還付手続きや証憑管理など、実務面での具体的な取扱いが補足されました。

本記事では、政令360号および通達158号の内容をもとに、ベトナム特別消費税制度の全体像を整理するとともに、日系企業を含む現地企業の実務にどのような影響が生じるのかについて、分かりやすく解説します。

政令360/2025/NĐ-CPとは(特別消費税制度の実務化)

位置づけと施行時期

政令360/2025/NĐ-CP(Decree 360/2025/ND-CP)は、改正特別消費税法を実務上どのように適用・運用するかを具体化する施行政令です。これにより、特別消費税の課税対象、非課税対象、税額の計算方法、税の申告・納付、控除・還付要件などが整理され、税務担当者にとっての解釈基準が明確になります。政令360号は2026年1月1日から有効です。

特別消費税(SCT)とは

特別消費税は、ベトナムにおける消費促進・生活様式調整・健康政策目的を背景に設定されている間接税の一種で、特定の商品やサービスの消費に対して課されます。この税は、一般の付加価値税(VAT)とは別に計算され、多くの耐久消費財や贅沢品・嗜好品が対象となっています。近年の改正特消税法でも、国民の消費行動に影響を与える品目や、社会政策に寄与する税制設計が強調されています。

課税対象と非課税対象の整理

基本ルール

政令360号は、改正特別消費税法および関連法規に基づき、「特消税の対象になる商品・サービス」と「対象外(非課税)」の区分を詳細に規定しています。対象となるのは、法律が定める特定品目に該当する場合です。

主な課税対象の例

政令360号では、以下のような品目・サービスが明示される形で特別消費税の対象とされています。

  • 四輪乗用車および特定の車両:座席数24席未満の乗用車、ピックアップトラックの一部など。
  • 航空機・水上・娯楽型製品:小型航空機、直升機、遊覧船など。
  • 耐久消費財:高性能エアコンなど一部の電気機器。
  • 嗜好品・消費財:砂糖含有量の高い清涼飲料、たばこ、アルコール類(一定条件下)。
  • サービス型課税対象:高級娯楽サービス(ゴルフ場運営、ギャンブル・カジノ等)。

これらは法律に基づくカテゴリーですが、政令360号により細かな適用条件や例外が定められています。

非課税対象

政令360号では、一定要件を満たす商品・サービスについては特消税が課されない場合も規定されています。非課税が認められるケースは、主に以下のようなものが含まれます。

  • 社会政策目的として例外とされる品目
  • 輸出目的等で税率免除が認められるもの
  • 法定基準に適合した中古品や中古車両など(条件付き)

非課税判断を行う際には、政令360号の定める具体的な要件と証憑書類の整備状況が重要になります。

特別消費税の計算方法と税率

税の計算ベース

特別消費税の課税ベースは、基本的に該当商品の販売価格(VAT抜きの価格)と定められています。政令360号では、国内生産品・輸入品の税額計算方法について整理しており、輸入時の価格評価や販売時の価格設定の基準についても規定しています。

税率について

政令360号では、品目ごとに定められた税率区分が適用されます。税率には、対象商品・サービスの性質や政策目的に応じた差異があり、たとえば高級車と嗜好品では税率が異なることがあるため、品目分類と税率の正確な確認が必須です(詳細な税率表は政令本文や通達等で正確に確認する必要があります)。

申告・納付・控除・還付

Nghị định 360/2025/NĐ-CPでは、特別消費税(Special Consumption Tax:SCT)の適用にあたり、どの取引・商品・サービスが「課税対象となるのか」、あるいは「非課税・免税として扱われるのか」について、制度上の整理が行われています。
特別消費税は、一般的な付加価値税とは異なり、対象となる品目や取引が限定されているため、該当区分の判断を誤ると、申告漏れや追徴課税につながるリスクがあります。

本政令では、特別消費税の適用関係を大きく次のように整理しています。

特別消費税の適用区分(政令360号ベース)

区分 主な内容 実務上の留意点
課税対象 酒類、たばこ、自動車、一定の飲料、娯楽・サービスなど、法律で定められた特定商品・役務 商品仕様やサービス内容により課税可否が分かれるため、品目ごとの確認が必要
非課税取引 輸出向け商品、国外消費を前提とする取引など 契約書・輸出関連書類など、非課税を裏付ける証憑の整備が重要
免税対象 外交目的、国際機関向け取引など、政策的に免税とされるケース 形式要件・対象者要件を満たす証明書類の保管が必須
控除・還付対象 原材料として使用される特別消費税課税品など 通達158号に基づく証憑管理が不可欠

このように、「課税されない」取引であっても、非課税・免税・控除のどれに該当するかによって、必要となる手続や書類は異なります。
特に、控除や還付を受ける場合には、単に税額計算上の調整を行うだけでなく、税務当局に対して正当性を説明できる証憑の整備が前提条件となります。

通達158号との関係性(実務上の重要ポイント)

政令360号が制度の枠組み(何が課税対象か、どのように扱うか)を定めているのに対し、通達158/2025/TT-BTCは、その制度を実務でどのように運用するかを具体的に示しています。

たとえば、

  • 非課税取引として認められるために必要な契約内容
  • 控除・還付を受ける際に求められる請求書や取引記録
  • 税務申告時に提出・保存すべき書類の考え方

といった点は、通達158号において詳細に示されています。
そのため、政令360号のみを理解していても、実務対応としては不十分となる可能性があり、両者をセットで確認することが不可欠です。

企業実務への示唆

特別消費税の対象となり得る商品やサービスを取り扱う企業にとっては、

  • 自社取引が「課税・非課税・免税」のどこに位置づけられるのか
  • 控除・還付の適用可能性があるか
  • その前提となる証憑が現行の管理体制で十分か

を、制度面と実務面の両方から再確認することが重要になります。
特に日系企業の場合、日本本社の税務感覚とベトナム特有の税制運用との間にギャップが生じやすいため、現地制度に即した整理が求められます。

通達158/2025/TT-BTCの役割(実務運用ガイド)

政令360号の公布と同日に、財務省は通達158/2025/TT-BTCを発行し、政令の実務運用に関して具体的な手続き・証憑要件を補完しました。通達158号は、特に以下の点で重要です。

非課税対象の証明に関する要件

通達158号は、政令360号で定める非課税対象品目の識別方法と必要書類の整備要件を明確にしています。たとえば、非課税の証明が必要な場合、税務署に提出するべきインボイス・契約書・技術基準証明などを具体的に記載しており、税務審査や税務調査に備えた書類整理基準が示されます。

還付申請手続きの細部

通達158号は、特定の還付申請手続き(とくにバイオ燃料の特消税還付に関するケース)について、申請書式・添付資料・申請方法を定めています。これにより、税務当局への提出書類の形式や、審査プロセスにおける適合性チェックが実務レベルで統一されます。

通達の効力

通達158号は、政令360号の施行日である2026年1月1日と同時に有効となり、以前の関連通達(例:TT-BTC 195/2015等)は置き換えられています。これにより、最新の実務ルールセットが一元化された形となっています。

企業実務への影響・対応

対象企業

政令360号および通達158号は、特別消費税の対象となる商品・サービスを扱う企業に大きな影響を与えます。たとえば:

  • 自動車販売会社
  • 高糖飲料・アルコール飲料の輸入販売会社
  • 電気機器(高出力エアコン等)の販売・輸入業者
  • 娯楽施設・サービス運営企業

などです。これらの企業は、特消税の課税・申告・控除・還付手続きを正確に実施する必要があります。

対応ポイント

  1. 対象商品・サービスの特消税適用要件の確認
    政令と通達に基づき、適用される税率・対象区分を正確に把握する必要があります。
  2. 税務申告・添付書類の準備
    通達158号で示された証憑要件に基づき、申告書・契約書・インボイス等を整理し、税務監査に耐えうる提出資料を準備します。
  3. 内部管理制度の見直し
    特消税対象製品について、価格設定、在庫管理、輸入取引のプロセスを見直し、税務リスクを最小化する体制構築が求められます。

7.まとめ

政令360/2025/NĐ-CPは、2026年1月1日から施行されたベトナム特別消費税(SCT)制度の実務上の中核ルールを定めるものであり、改正特別消費税法の内容を具体的な運用レベルへと落とし込んだ重要な法令です。課税対象となる商品・サービスの範囲、課税価格の考え方、税額計算の方法、申告・納付・控除・還付といった一連の税務プロセスが体系的に整理されました。

これに加えて、同時に公布された通達158/2025/TT-BTCは、政令360号の内容を企業実務の視点から補完する役割を果たしています。特に、非課税・免税の判断に必要な証憑書類の内容、還付申請時の具体的な手続き、提出書類の形式などが明確化された点は、実務担当者にとって重要なポイントといえます。政令だけでは判断が難しかった部分について、通達により実務上の基準が示されたことで、税務対応の透明性と予見可能性は一定程度高まったと評価できます。

もっとも、特別消費税は対象品目ごとに税率や取扱いが大きく異なる税目であり、誤った区分や判断は、追徴課税やペナルティにつながるリスクを伴います。とりわけ、自動車、飲料、電気機器、娯楽サービス等を取り扱う日系企業においては、自社の商品・サービスが特別消費税の対象に該当するかどうか、またどの税率区分が適用されるかについて、改めて整理・確認することが求められます。

また、輸入取引や輸出向け製品、委託加工取引などが関係する場合には、課税タイミングや控除・還付の可否について、政令360号および通達158号の規定を踏まえた慎重な対応が必要です。特に、非課税や還付を主張する場合には、通達で求められる証憑書類を適切に整備・保管しておくことが、将来的な税務調査対応の観点からも重要となります。

2026年以降の特別消費税制度は、法令上の枠組みだけでなく、実務運用の積み重ねによって解釈や運用が固まっていく部分も少なくありません。そのため、企業としては、制度の全体像を把握したうえで、今後公表される税務当局のガイダンスや実務動向を継続的に確認し、自社の税務対応や内部管理体制を適宜見直していく姿勢が求められます。

本政令および通達は、単なる税率変更にとどまらず、ベトナム市場における価格戦略、商品設計、投資判断にも影響を及ぼし得る制度改正です。日系企業においては、税務・会計部門のみならず、経営層や事業部門とも情報を共有し、特別消費税を含めた中長期的な事業運営の観点から、総合的な対応を検討していくことが重要といえるでしょう。

当社では、今後もベトナム税制・法令の最新動向について整理し、日系企業の実務に役立つ情報を分かりやすく発信してまいります。

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