2026年度 ベトナム地域別最低賃金について
ベトナムにて事業を展開される企業様にとって重要な時期がやってまいりました。
2026年の地域別最低賃金が改定され、2025年11月10日付で Decree 293/2025/NĐ-CP が公布されました。本稿では、その内容と企業実務への影響を整理いたします。
最低賃金改定の背景と目的
今回の改定は単なる賃金引き上げではなく、以下の社会経済的変化を踏まえた制度調整の一環です。
- 都市部の物価上昇・生活コストの上昇
- 外資系企業進出による労働力獲得競争の激化
- 経済成長に伴う賃金水準の適正化需要
最低賃金は労働者の生活基盤であると同時に、企業にとっては主要なコスト要素です。
本改定の目的は、経済成長・生活水準向上・雇用安定のバランス確保にあります。
企業にとっても制度見直しの機会であり、従業員の定着・モチベーション向上につながる可能性があります。
ベトナムの最低賃金は誰がどう決めるのか
ベトナムの最低賃金は 国家賃金評議会(NWC:National Wage Council) が審議し、政府が最終決定します。
構成:政・労・使+専門家
| 区分 | 主体 | 主な役割 |
| 政府 | MOLISA(労働・傷病軍人・社会省) | 経済指標・物価の分析、改定案作成 |
| 労働者側 | VGCL(労働総同盟) | 最低生活費・物価上昇を反映した意見提出 |
| 使用者側 | VCCI(商工会議所) | 企業の支払能力・産業別状況を提示 |
| 専門家 | 独立専門家 | 社会経済・労働に関する客観的意見 |
評議会での協議を経て、合意案を首相府が政令として公布する流れです。
最低賃金改定で考慮されるポイント
最低賃金改定時は以下の点が総合的に考慮されます。
- 経済成長率・物価上昇(CPI)・雇用市場
- 労働者の最低生活費
- 企業の支払能力・雇用維持への影響
- 地域ごとの発展度・経済格差
- 社会・雇用の安定性
2026年度 ベトナム地域別最低賃金(2026/1/1 適用開始)
Decree 293/2025/NĐ-CP(2025年11月10日公布) にて、以下の2026年地域別最低賃金が発表されました。
| 地域 | 月額最低賃金 (VND) | 時間給最低賃金 (VND) | 主な都市例 |
| Region I | 5,310,000 | 25,500 | ハノイ、ホーチミン市、ハイフォン、ダナン |
| Region II | 4,730,000 | 22,700 | ハイズオン、バクニン、ビンズオン |
| Region III | 4,140,000 | 20,000 | ハナム、フートー、ティエンジャン |
| Region IV | 3,700,000 | 17,800 | ビンディン、ニントゥアン、カマウ |
※複数地域に拠点がある場合、最も高い地域の最低賃金を適用。
今回の改定幅は +250,000〜350,000 VND(平均 +7.2%) とされています。
適用対象
- 雇用契約に基づき働く全労働者に適用(正社員・契約社員・パート・派遣含む)
- 月給・時給・週給・日給・出来高制・請負制などすべての支払い形態が対象
→ 換算後の賃金が最低賃金を下回ってはならない
企業が取るべき実務対応
- 給与規程・労働契約の見直し
2026年1月以降、新基準を満たすよう給与体系を調整。 - 複数拠点の地域区分の確認
支店・工場が複数地域にある場合は、もっとも高い地域基準を適用。 - 手当・割増賃金の管理
基本給+手当の取り扱いを再確認し、最低賃金割れを防止。 - 従業員への周知
改定内容を社内掲示・面談・通知文などで明確に共有。
まとめ
- 2026年1月1日より地域別最低賃金が改定(Decree 293/2025/NĐ-CP)
- 月額は 3,700,000〜5,310,000 VND、時間給は 17,800〜25,500 VND
- 今回の改定幅は +250,000〜350,000 VND(平均 +7.2%)
- 全雇用形態に適用され、換算後の賃金が下回らないよう義務付け
- 複数地域の拠点は「最も高い地域」を適用
- 給与体系・契約書・手当体系の見直しが必要
今回の制度改正は、ベトナム国内で労働契約に基づき就労するすべての労働者に適用されます。月給制・時給制・週給制・日給制・出来高制など、どのような賃金形態であっても、最終的な月給換算または時間換算額が地域別最低賃金を下回らないよう企業には遵守が求められます。特に、基本給に加えて職務手当・責任手当・技能手当・シフト手当など各種手当を含めた賃金構成を総合的に管理し、最低基準を満たしているか確認することが重要です。
さらに、複数地域に拠点を持つ企業や、勤務地によって地域区分が異なる場合は、拠点ごとの適用地域を改めて精査する必要があります。日給制・週給制・出来高制を採用する企業では、換算方法の正確性や労働時間・成果の記録方法など、給与算定の透明性が従来以上に重視されるようになります。これに伴い、給与計算ルールや内部手続きの見直しが求められます。
今回の改定は、国内物価の上昇や都市部の生活コスト増、労働者の生活水準を維持・向上させる必要性、人材確保競争の激化といった社会経済的背景を踏まえたものです。企業にとっては人件費の上昇という負担が生じる一方で、政府は社会の安定、労働市場の健全化、そして将来の経済成長に不可欠な人材確保を政策的目的として掲げています。外資系企業を含む雇用主全体に、より持続可能な雇用環境を整備する姿勢が求められる局面でもあります。
2026年の地域別最低賃金改定(Decree 293/2025/NĐ-CP)は、単なる引き上げではなく、労働者の保護と企業の安定した成長を両立するための制度的調整と位置づけられます。物価上昇や都市集中、外資進出など、急速に変化する経済環境を踏まえつつ、政労使三者の協議によって慎重に策定された点にも特徴があります。
企業としては、給与制度、賃金テーブル、各種手当、雇用契約書、就業規則などの関連文書を再点検し、改定後の制度に整合するよう早期に調整することが求められます。適切な制度運用は、コンプライアンス対応だけでなく、従業員の意欲向上、優秀人材の定着、労働トラブルの回避など、組織全体の安定と企業価値向上にもつながります。
最低賃金の遵守は、単なるコスト増への対応ではなく、企業と従業員がともに持続的に発展していくための基盤づくりです。今回の改定を機に、貴社の人事・労務制度をより強固なものとし、中長期的な経営戦略を支える労務管理の確立につなげることが期待されます。
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