はじめに/ベトナム進出企業は新しい会計制度への対応確認が必要です
ベトナムへ進出する日本企業にとって、法人設立後の会計・税務管理は、事業を安定して運営するために欠かせない重要な業務です。
会社設立や投資許可の取得が完了した後も、現地法人では、
- 毎月の会計処理
- VAT(付加価値税)の申告
- 電子インボイス管理
- 法人税申告
- 年次決算
など、継続的な管理が必要になります。
そのような中、ベトナムでは2026年7月1日より、超小規模企業向けの新しい会計制度である「通達58/2026/TT-BTC」が施行されます。
この制度変更は、対象となる超小規模企業だけでなく、これからベトナム法人を設立する日本企業にとっても、設立後の会計管理体制を考える上で重要なポイントになります。
本記事では、「通達58/2026/TT-BTC」の概要と、日系企業が確認すべき対応ポイントについて解説します。
「通達58/2026/TT-BTC」とは?
「通達 58/2026/TT-BTC」とは、ベトナム財務省が発行した、超小規模企業向けの会計制度を定めた通達です。
なお、超小規模企業(ベトナム語:Doanh nghiệp siêu nhỏ)は、日本語では「零細企業」と訳されることもあります。
これまで超小規模企業向けの会計制度として適用されていた「通達132/2018/TT-BTC」に代わり、新たな会計ルールとして導入されます。
概要は以下の通りです。
今回の変更では、対象企業が自社の規模や税務方式に応じて、適切な会計管理方法を選択することが重要になります。
| 項目 | 内容 |
| 通達名 | 通達58/2026/TT-BTC |
| 発行機関 | ベトナム財務省 |
| 発行日 | 2026年5月25日 |
| 施行日 | 2026年7月1日 |
| 対象 | 超小規模企業 |
| 旧制度 | 通達132/2018/TT-BTC |
| 対象内容 | 会計証憑、会計帳簿、財務報告などの管理方法 |
なぜベトナムの会計制度変更が日系企業に関係するのか?
「超小規模企業向けの制度なら、大きな企業には関係ないのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、ベトナムへ進出したばかりの日系企業では、設立当初は小規模な体制からスタートするケースが多くあります。
例えば、
- 日本人駐在員1名と現地スタッフ数名で開始する法人
- 販売拠点として設立した小規模法人
- 少人数で運営するサービス会社
- 将来的な工場設立を見据えた準備会社
などです。
そのため、自社がどの会計制度の対象になるのか、またどの管理方法が適しているのかを確認することが重要になります。
超小規模企業とは?
超小規模企業(ベトナム語:Doanh nghiệp siêu nhỏ)とは、ベトナムの中小企業分類における最も小さい区分の企業を指します。
通達58/2026/TT-BTCでは、この超小規模企業向けの会計制度が定められていますが、対象となる企業の判断基準は通達58自体で新たに定められているものではありません。
ベトナムの中小企業支援に関する法令(政令80/2021/NĐ-CP)に基づき、以下の項目を総合的に判断します。
- 従業員数
- 年間売上高
- 総資本金
- 業種
具体的な基準は以下の通りです。
| ベトナム語 | 日本語訳の例 | 規模 |
| Doanh nghiệp siêu nhỏ | 超小規模企業・零細企業 | 最も小さい区分 |
| Doanh nghiệp nhỏ | 小規模企業 | 小さい企業 |
| Doanh nghiệp vừa | 中規模企業 | 中堅企業 |
ただし、「従業員数が少ない会社=超小規模企業」という単純な判断ではありません。
例えば、設立直後の日系企業であっても、事業規模や売上規模によっては対象外となる可能性があります。
また、超小規模企業に該当する場合でも、必ず通達58/2026/TT-BTCの簡易的な会計制度を利用しなければならないわけではありません。
事業内容、税務方式、将来的な成長計画などを踏まえ、自社に適した会計管理方法を選択することが重要です。
変更ポイント①/企業の状況に応じた会計管理が必要になる
今回の通達58/2026/TT-BTCで重要なのは、企業ごとに適した会計管理方法を選択する必要がある点です。
企業は、
- VATの申告方法
- 法人所得税の計算方法
- 取引内容
- 事業規模
などを踏まえて、適切な会計処理を行う必要があります。
つまり、「会社が小さいから簡単な会計でよい」という判断ではなく、「自社の事業内容や税務管理に合った会計体制を構築する」ことが重要になります。
変更ポイント②/電子インボイスと会計処理の管理がより重要に
近年のベトナムでは、税務管理のデジタル化が進んでいます。
特に電子インボイスの普及により、企業が管理する会計情報と税務当局が確認する情報の一致が求められています。
日系企業では、
- 売上計上
- 仕入処理
- VAT請求書管理
- 支払記録
- 契約書管理
などを正しく整理する必要があります。
例えば、請求書の発行日と売上計上日が一致していない、仕入証憑が不足しているといった問題は、税務確認時のリスクにつながる可能性があります。
変更ポイント③/外部会計サービスの活用が重要になる
ベトナム進出直後の企業では、社内に専門的な経理担当者を配置することが難しい場合があります。
そのため、
- 外部会計サービス
- 税務サポート会社
- 会計専門スタッフ
を活用する企業も増えています。特に日系企業の場合、「日本本社への報告」「ベトナム税務への対応」「現地スタッフとの管理体制」を両立する必要があります。
設立初期から正しい会計管理体制を構築することで、将来的な事業拡大や税務リスク低減につながります。
製造業の日系企業は特に注意が必要
ベトナムへ進出する日系企業の中でも、製造業の場合は特に注意が必要です。
製造業では、売上や経費だけではなく、
- 原材料在庫
- 製品在庫
- 製造原価
- 設備管理
- 減価償却
- 棚卸管理
など、より詳細な管理が必要になります。
例えば、簡易的な会計処理が法律上可能であったとしても、
「どの製品が利益を生んでいるのか」
「製造コストは適正なのか」
「設備投資をどのように管理するか」
を判断するためには、正確な会計情報が必要です。
そのため、製造業の場合は会社規模だけで判断せず、将来的な事業計画を踏まえて会計制度を検討することが重要です。
2026年7月以降、日系企業が確認すべきポイント
2026年7月1日から新制度が開始されるため、対象となる企業は現在の会計管理方法を確認しておくことが重要です。
ただし、7月1日以降すぐに事業運営ができなくなるというものではありません。
まずは、自社がどの制度に該当するのか、現在の会計処理が適切なのかを確認することが大切です。
既にベトナム法人を運営している企業
□ 現在利用している会計制度の確認
□ 新制度への対応確認
□ 電子インボイス管理状況の確認
□ 会計資料・証憑管理の確認
□ 税務申告方法の確認
これからベトナム進出する企業
□ 設立時の会計制度選択
□ 経理管理体制の構築
□ 外部会計サービス利用の検討
□ 日本本社への報告方法整理
□ 税務・会計スケジュール作成
まとめ/ベトナム法人の会計体制は設立時から準備することが重要
2026年7月1日から施行される「通達 58/2026/TT-BTC」により、ベトナムの超小規模企業向け会計制度は新しいルールへ移行します。
今回の変更で重要なのは、単純に会計処理が簡単になるということではありません。
企業規模、税務方式、事業内容、将来的な成長計画に合わせて、自社に適した会計管理体制を構築することが重要です。
特に日系企業の場合、日本本社との連携や税務リスクを考慮すると、法人設立時から会計体制を整えておくことが、ベトナム事業を安定して運営するためのポイントになります。
MEIKEIでは、ベトナム法人設立支援だけでなく、設立後の会計処理、税務申告、月次管理まで、日系企業のベトナム事業運営を継続的にサポートしています。
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