はじめに
ベトナムでは、環境負荷低減やエネルギー政策の一環として、2026年6月1日よりE10ガソリンの全国導入が開始されました。
E10ガソリンとは、ガソリンにバイオエタノールを10%混合した燃料です。従来の化石燃料への依存を低減し、温室効果ガス排出量の削減を目的として、ベトナム政府が導入を進めてきた燃料規格の一つです。
E10ガソリンの導入背景や全国展開までの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
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一方で、E10ガソリンを全国規模で普及させるためには、燃料を切り替えるだけではなく、価格設定、品質管理、流通体制など、実際の運用面における制度整備が必要になります。
こうした背景から、ベトナム政府は**Nghị quyết 29/2026/NQ-CP(政府決議29号)**を公布し、E10ガソリン導入後の市場安定化に向けた一定期間の試行措置を定めました。
本決議は、E10ガソリンに関する制度を完全に固定化するものではなく、導入初期における価格管理や品質管理などの運用を検証することを目的とした試行的な政策となります。
本記事では、政府決議29号で示された試行措置の内容と、ベトナムで事業を展開する日本企業が確認すべきポイントについて解説します。
政府決議29号とは?
政府決議29号(Nghị quyết 29/2026/NQ-CP)は、E10ガソリンの導入を円滑に進めるため、導入後一定期間における試行的な政策運用を定めたものです。
E10ガソリンは、従来のガソリンにエタノールを混合した新しい燃料規格であるため、全国的に普及させるためには、燃料供給事業者だけでなく、行政による管理体制の整備も重要になります。
特に導入初期には、
- E10ガソリンの価格安定化
- 燃料品質の維持
- 既存燃料からの円滑な移行
- 安定した供給体制の確保
といった課題への対応が必要になります。
政府決議29号では、これらの課題に対応するため、価格管理・品質管理・在庫処理などについて、一定期間の試行措置として具体的な方針が示されています。
政府決議29号で示された試行措置の主な内容
①E10ガソリン価格管理の試行
政府決議29号では、E10RON95-IIIについて、国家による価格管理の対象として試行することが定められています。
E10ガソリンは、通常のガソリンにエタノールを混合した燃料であるため、価格を決定する際には、従来のガソリン価格だけでなく、混合されるエタノールの価格や供給状況なども考慮する必要があります。
そのため、試行期間中は、E10RON95-IIIについて政府が価格管理を行い、市場価格の安定化を図る仕組みが導入されています。
具体的には、
- E10RON95-IIIの価格算定要素の整理
- 燃料価格の公表方法の整備
- 市場への安定供給を目的とした価格管理
などが行われます。
これは、E10導入直後に価格変動が大きくなることを防ぎ、消費者や事業者が安定して新しい燃料へ移行できる環境を整えることを目的としています。
ベトナム進出企業への影響
燃料価格の変化は、企業活動における様々なコストへ影響する可能性があります。
例えば、
- 原材料輸送費
- 製品配送費
- 営業車両の維持費
- 工場内物流コスト
などが挙げられます。
特に製造業では、物流費が製品原価へ影響するため、燃料価格だけではなく、運送会社の料金改定や輸送契約への影響も確認することが重要です。
②E10ガソリンの品質確認・検査体制の整備
E10ガソリンは、従来のガソリンとは異なり、エタノールを混合した燃料であるため、安定した品質を維持するための検査体制が重要になります。
政府決議29号では、E10導入に伴う品質管理の試行措置として、石油製品の品質確認において試験サービスを活用できる仕組みが示されています。
これにより、燃料事業者は必要に応じて、適切な検査機関などを活用しながら、流通する燃料の品質を確認することができます。
特に確認が必要となる項目として、
- エタノール混合比率
- 燃料品質基準への適合
- 流通段階での品質維持
などがあります。
E10導入初期において、燃料品質に関する問題を防ぎ、消費者や事業者が安心して利用できる環境を整えることが目的です。
企業が確認すべきポイント
一般的な製造企業が直接燃料品質を管理することはありませんが、以下のような企業では影響を確認する必要があります。
- 自社配送車両を保有している企業
- 工場内で車両や輸送設備を使用している企業
- 物流会社へ輸送業務を委託している企業
燃料規制の変更は、製造工程だけではなく、物流や輸送体制にも影響する可能性があります。
③導入前から残る従来型ガソリン在庫への対応
E10ガソリンへの移行では、導入開始時点で市場に残っている従来型の無鉛ガソリンをどのように取り扱うかも重要な課題となります。
政府決議29号では、E10への円滑な移行を進めるため、既存の無鉛ガソリン在庫について一定の処理方針が示されています。
これは、すでに保管・流通している燃料を一律に廃棄するのではなく、市場への影響を抑えながら段階的に移行するための措置です。
燃料事業者などの関係者は、政府が示す移行方針に従い、既存在庫の管理や販売体制を調整する必要があります。
企業への影響
一般企業が直接対応する場面は限定的ですが、物流会社や燃料供給会社と取引している企業では、燃料供給体制の変更について確認しておくことが重要です。
特に製造業では、燃料供給や輸送コストの変化が、物流費や製品原価へ影響する可能性があります。
ベトナム進出企業が確認すべきE10導入の影響
① 物流コストへの影響
ベトナムで製造拠点や販売拠点を運営する企業にとって、物流費は重要な管理項目です。
燃料価格の変化は、運送会社の料金設定や輸送コストへ影響する可能性があります。
確認すべきポイントとして、
- 運送契約における価格改定条件
- 燃料価格変動時の対応
- 輸送ルートの効率化
などがあります。
② 社用車・営業車両への対応
ベトナムに進出している日本企業では、営業活動や従業員移動のため車両を利用するケースがあります。
E10導入後は、使用している車両が対応可能か、メーカー情報などを確認しておくことが重要です。
また、今後はEV普及政策など車両関連の制度変更も進むことが予想されるため、長期的な視点で対応を検討する必要があります。
③ 現地法人のコスト管理
制度変更による影響を正確に把握するためには、現地法人における継続的なコスト管理が重要です。
確認すべき項目として、
- 製造原価
- 輸送費
- 外注費
- 管理費
などがあります。
燃料政策の変更は、一見すると小さな変化に見えても、長期的には企業収益へ影響する可能性があります。
E10導入はベトナムの環境政策転換の一環
E10ガソリンの導入は、単なる燃料規格の変更ではありません。
ベトナム政府は、2050年までのカーボンニュートラル達成に向け、環境負荷低減やエネルギー転換に関する政策を進めています。
今後も、
- EV普及政策
- 排出規制
- 再生可能エネルギー政策
- 環境関連制度
など、企業活動へ影響する制度変更が行われる可能性があります。
ベトナムへ進出する企業にとっては、こうした政策動向を把握し、事業計画やコスト管理へ反映することが重要です。
まとめ
2026年6月1日から開始されたE10ガソリンの全国導入に伴い、ベトナム政府は導入後の市場安定化に向けた試行措置を進めています。
政府決議29号では、E10ガソリンの価格管理、品質確認・検査体制、既存燃料在庫への対応などについて、一定期間の試行ルールが示されました。
現時点では、これらの制度は完全に固定化されたものではなく、政府決議29号に基づく試行措置として運用されています。
本決議の有効期間は2026年6月16日から2028年6月15日までとされており、この期間中の運用状況や市場への影響を踏まえながら、今後の制度化や調整が行われる可能性があります。
日本企業にとって、E10導入に伴う試行措置の内容は、燃料業界だけではなく、物流費や現地法人の運営コストにも関係する可能性があります。
ベトナムで事業を展開する企業は、制度変更を早期に把握し、自社の事業運営への影響を確認しておくことが重要です。
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