【労務】「ベトナム文化の日」有給祝日追加方針の概要(決議第80-NQ/TW号)

「ベトナム文化の日」有給祝日追加方針と企業労務への影響

2026年1月7日、ベトナム共産党政治局は「ベトナム文化の発展に関する決議第80-NQ/TW号」を公布した。本決議は、文化を国家発展の中核要素として再定義し、経済成長・社会安定・人的資源の高度化を支える基盤として位置付ける包括的な政策方針を示している。

本決議の中で、企業の労務管理や人事制度に直接関係する重要な方針として注目されているのが、毎年11月24日を「ベトナム文化の日」と定め、有給の祝日とする方向性が明確に示された点である。本稿では、当該方針の背景、現行制度との関係、今後の法改正見通し、そして企業実務への影響について詳しく解説する。

決議第80-NQ/TW号とは何か

決議第80-NQ/TW号は、文化を「精神的価値」にとどめず、「国家競争力を形成する戦略資源」として捉える点に大きな特徴がある。ベトナムは近年、経済成長と国際統合を急速に進めてきた一方で、社会的価値観の変化や都市化による文化的課題も顕在化している。

こうした背景のもと、政治局は文化政策を抜本的に強化し、教育、労働、企業活動、地域社会のすべてに文化的価値を浸透させることを国家レベルで推進する方針を打ち出した。その象徴的な施策の一つが、「ベトナム文化の日」の制度化である。

「ベトナム文化の日」制定の意義

11月24日は、1946年にベトナム初の全国文化会議が開催された日であり、従来から文化関係者の間では重要な記念日とされてきた。今回の決議では、この日を国民全体が共有する記念日として再定義し、文化的価値を再認識する機会とすることが明記されている。

さらに注目すべき点は、単なる記念日ではなく、労働法上の「有給祝日」とする方向性が示されたことである。これは、文化政策と労務制度を結び付ける新しい試みであり、企業活動にも直接的な影響を及ぼす可能性がある。

現行のベトナム祝日制度の整理

現在のベトナム労働法(2019年労働法)第112条では、労働者が毎年有給で取得できる祝日・テト休暇は合計11日間と定められている。内訳は以下の通りである。

  • 西暦新年(1月1日):1日
  • テト(旧正月):5日
  • 戦勝記念日(4月30日):1日
  • 国際メーデー(5月1日):1日
  • 建国記念日(9月2日および前後いずれか1日):2日
  • フン王記念日(旧暦3月10日):1日

今回の「ベトナム文化の日」が正式に追加された場合、法定有給祝日は12日以上となる可能性があり、これは労務管理上の重要な変更点となる。

現時点での法的ステータスと改正プロセス

本件は、あくまで政治局決議に基づく政策方針段階であり、現時点では労働法上の効力は発生していない。施行時期や具体的な制度内容についても、まだ公表されていない。

現在は、内務省雇用局が労働法改正に向けて、「ベトナム文化の日」を祝日規定に追加する案を法制局へ提案している段階とされている。今後は、法改正案の策定、関係機関の意見聴取、国会審議を経て、正式な施行が決定される流れとなる見込みである。

そのため、企業としては「すぐに対応が必要な制度」ではないものの、中期的に想定すべき法改正リスクとして認識しておく必要がある。

企業労務・人事実務への影響

(1)年間稼働日数・人件費への影響

有給祝日が1日増加した場合、年間の稼働日数が減少し、間接的に人件費や生産計画に影響を及ぼす可能性がある。特に製造業、物流業、サービス業など、稼働日数が業績に直結する業種では、事前の影響分析が重要となる。

(2)祝日勤務・割増賃金対応

祝日に業務を行う場合、ベトナム労働法に基づき、通常賃金に加えて高率の割増賃金を支払う必要がある。新たな祝日の追加は、祝日勤務の管理やコスト算定にも影響を与える。

(3)就業規則・社内規程の見直し

法定祝日が追加されれば、就業規則、労働契約書、社内カレンダー等の改定が必要となる。特に外資系企業や日系企業では、本社規程との整合性を確認しながら、現地法令に即した対応が求められる。

日系企業に求められる中長期的視点

今回の決議は、単なる祝日追加ではなく、「文化を重視する国家運営」への転換を象徴するものである。今後、労務政策においても、ワークライフバランス、従業員の精神的充足、企業文化の形成といった要素が、これまで以上に重視される可能性が高い。

日系企業にとっては、法令遵守だけでなく、ベトナム社会が重視する価値観を理解し、企業運営に反映させることが、優秀な人材確保や長期的な事業安定につながる。

まとめ:今後の対応ポイント

「ベトナム文化の日」の有給祝日化は、現段階では方針レベルの内容ではあるものの、将来的に労務管理へ実質的な影響を及ぼす可能性が高い。企業としては、

  • 労働法改正動向の継続的なモニタリング
  • 稼働日数・人件費への影響試算
  • 就業規則・社内制度の柔軟な見直し体制の整備

といった点を意識し、早めに準備を進めておくことが望ましい。

当社では、今後もベトナムの労務・法制度改正に関する最新情報を、企業実務に即した形で継続的に発信していく。

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