ベトナム付加価値税法の改正

「ベトナム付加価値税法改正(法律149/2025/QH15)」の概要と実務対応 

2025年12月11日、ベトナム国会は 「Luật Thuế giá trị gia tăng sửa đổi 2025(付加価値税法改正法)149/2025/QH15」 を可決しました。

本サイトでは、これに先立ち、改正法案(草案)段階における内容についても解説してきましたが、今回、国会で正式に可決されたことにより、改正内容と施行時期が確定しました。

本法律は、既存の付加価値税法(VAT法)の一部条項を修正・補足し、2026年1月1日より施行されました。付加価値税(VAT)はベトナムの主要な間接税の一つであり、企業活動のほぼすべての段階で発生する税目です。今回の改正は、農林水産物、個人・小規模事業者、VAT還付制度、製造過程で発生する副産物の扱いなど、実務対応に直結するポイントを多く含んでいることから、日系企業を含む現地企業にとっても重要な内容となっています。

以下では、改正法の主なポイントと企業実務への影響、対応上の注意点を整理して解説します。

法律の位置づけと施行時期

本法律は、2024年に制定された付加価値税法(Luật Thuế giá trị gia tăng 2024)をベースに、以下の点で修正・補完を行うものです。

  • 法律番号:149/2025/QH15
  • 公布日:2025年12月11日
  • 施行日:2026年1月1日
  • 主な目的:VAT制度の運用上の不明点・課題を解消し、実務の円滑化を図ること

改正内容は、次章以降で詳しく整理しますが、いずれも実務上の「不確実性の解消」や「納税者負担の最適化」を意図したものと評価できます。

改正の主要ポイント

今回の法律149号では、VAT制度に関する複数の重要な変更が行われています。以下に主要な改正点を整理します。

1.一次農林水産物のVAT取扱いの明確化

改正法では、農産物、林産物、畜産物、養殖水産物、漁獲物などの一次製品について、取扱いを次のように規定しています。これにより、現場で解釈が分かれていた課税関係が明確になりました。

  • 自ら生産・採取した一次製品を加工せず販売する場合
  • 他企業・協同組合等が購入・販売する場合

これらの取引は VATの申告・納付義務がなくなる一方で、仕入時に支払ったVAT(仕入税額)は控除可能 とされます。

2.個人・小規模事業者に対する適用範囲の変更

現行法では、VATの申告義務の対象となる年間売上基準が低く設定されていましたが、改正法では その基準が引き上げられています

対象 旧規定 新規定
個人・小規模事業者のVAT申告義務の免除基準 年間売上 200百万 VND以下 年間売上 500百万 VND以下
VAT申告方法 定額・税額算定(例:税率適用方式など) 売上基準による免除・簡便申告

この改正により、より多くの個人事業者・小規模者がVAT申告義務から解放される可能性が高くなります。特に、年間売上が500百万VND前後の小規模事業者を多数抱える企業やグループでは実務上見直しが必要です。

3.VAT還付要件の見直し

2024年のVAT法では、還付申請において売手側(インプット税請求書の発行者)がすでにVAT申告・納付を完了していること が条件とされ、実務上の手間や遅延要因となっていました。

改正法149号ではこの要件を撤廃し、VAT還付申請者が必ずしも売手側の申告済み条件を満たす必要がなくなります。この変更は、特に輸出関連企業や大規模な仕入控除を行う企業にとって、キャッシュフロー改善や申告処理の迅速化に寄与する可能性があります。

4.副産物・廃棄物のVAT税率適用の明確化

これまでは、製造過程で発生する副産物(phế phẩm)、副製品(phụ phẩm)、廃棄物(phế liệu)に対するVAT税率の適用基準が不明確な部分がありましたが、改正法はこれを整理しています。

改正法により、これらの製造副次物については、「主製品に適用される税率を基準として判定する」 と明示され、異なる扱いによる誤解や申告ミスを避ける方向づけがなされました。

改正内容一覧(比較表)

以下は、主な改正点を改正前後で比較した表です。この表を使うことで、日系企業の税務担当者や経理担当者が実務対応を効率的に進めることができます。

改正項目 改正前(2025年まで) 改正後(法律149号/2026年~)
一次農林水産物の取扱い 売上に対してVAT申告が必要 特定取引はVAT非課税・仕入控除可
小規模・個人事業者のVAT免除基準 年間売上 200M VND以下 年間売上 500M VND以下
VAT還付の売手側要件 売手が申告・納税済みであることが必要 条件撤廃 → 申告者だけで申請可
副産物・廃棄物の税率適用 判定基準が曖昧 主製品に準じた税率を適用
税務申告方法 一部旧態維持 小規模者の簡便化・免除規定を強化

企業実務への影響ポイント

改正法の施行により、企業には以下のような実務的な影響や対応課題が生じます。

① VAT申告義務の範囲見直し

個人・小規模事業者との取引を多数扱う企業は、売上仕訳・請求書管理の見直しが必要です。特に、年間売上500百万VNDを基準にした判定は、企業のパートナー・サプライヤ管理プロセスに影響します。

② VAT還付申請プロセスの改善余地

売手側の申告状況に左右されない還付申請が可能になるため、還付申告書の作成・添付書類の整理負担が軽減され、税務処理の迅速化が期待できます。

③ 農林水産品の取引処理

一次製品のVAT非課税処理は、農産物・水産物等を扱う商社や卸売企業にとって、日常の請求書処理や税額計算の方法を見直す必要が生じます。

④ VAT計算フレームの統一

副産物・廃棄物の扱いの明確化は、製造業向けの税務計算ルールの統一につながり、内部統制や税務監査対応の精度を高めます。

施行時期と注意点

改正法149号は、2026年1月1日より施行されました。これは2026年分の課税期間におけるVAT申告・還付・控除申請から適用されるため、早めの社内研修・システム対応が重要です。

なお、本法律は政令181/2025/NĐ-CPや通達等の施行細則・運用規則によって具体化されることが多く、実務面ではこれらとの整合性確認が不可欠です。具体的には、政令359号のような現場対応ルールと連携して適用していく必要があります。

まとめ

「Luật Thuế giá trị gia tăng sửa đổi 2025(法律149/2025/QH15)」は、ベトナムのVAT制度に関する法律レベルの大切な改正です。特に、一次農林水産品のVAT非課税処理、小規模・個人事業者の免除基準引上げ、VAT還付要件の撤廃、副産物・廃棄物の適切な税率判定などは、2026年以降の実務対応に大きな影響を与えます。

これらの改正を理解したうえで、税務申告プロセスや内部管理プロセスの見直し、中長期的な税務戦略の構築を進めることが、ベトナム事業におけるコンプライアンス強化・税務リスク低減につながります。

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