ベトナムにおける最低賃金(2025年7月時点)

ベトナムにおける最低賃金(2025年7月時点)

前回、当ウェブサイトでご案内致しましたベトナムの最低賃金(以下)は、
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/minimum-wage-2022-2/
2022年度改定のものですので、最新のベトナム最低賃金情報(2024年7月改定)の情報を本項にてご紹介致します。

ベトナムの最低賃金制度(一般最低賃金と地域別最低賃金)

ベトナムの最低賃金制度は、①一般最低賃金(公務員等)=「基準賃金」(General Minimum Wage:GMW) と、②地域別最低賃金(民間企業向け)=「地域別賃金」(Regional Minimum Wage:RMW)の2本立てです。

(GMW:基準賃金)は、2023年7月1日改定(+30%)され、(RMW:地域別賃金)は、2023年は改定がありませんでした。

2023年にRMW:地域別賃金の改定がなかったのは、2020~2021年のCOVID‑19大流行以降、企業の経営回復が遅れており、これによって2022年も一度改定が行われましたが、2023年は「回復途上」として再び据え置きが選ばれたためです。**2023年10月13日の「Công văn 7978/VPCP-KTTH」にて、『2023年は最低賃金制定を見送る』と正式に決定。

実際にはインフレ率も上昇していたものの、企業の負担を鑑み、最低賃金を据え置く判断が優先されました。この決定は、「企業への負荷の軽減」と「労働者の保護」のバランスを図ったものと考えられます 。

その翌年、前年に改定の無かったRMW:地域別賃金は、2024年7月1日改定(+6%、7月変更)されました。これまでベトナムは、夏から秋にかけて次年度の最低賃金検討に入り、年初(1月1日)改定が基本でしたが、最近では、COVID‑19の影響で7月改定が連続しています。

地域別最低賃金の基準となる「基準賃金」(GMW)は、2023年7月1日に、基準賃金は 1,800,000 VND → 2,340,000 VND に引き上げられました(公務員や基準賃金を基に社会保険料等を決定)

最新のベトナム地域別最低賃金(民間企業向け)RMW(2025年7月時点)は?

以下は、2025年7月時点で(最新の)ベトナムにおける地域別最低賃金(Regional Minimum Wage: RMW)の概要です。

2024年7月1日付で、令和74/2024/ND‑CPにより約6%引き上げられましたが、それ以降はRMWは改定はされていませんので、2024年7月改定内容が、最新のものとなります。

現在の月額と時間額は以下の通りです(区域区分は都市型順に1→4):

区域 月額 (VND) 時給 (VND) 日本円目安*
1(都市部) 4,960,000 23,800 約33,000円
2(準都市部) 4,410,000 21,200 約29,000円
3(中規模地域) 3,860,000 18,600 約25,000円
4(農村等) 3,450,000 16,600 約22,500円

*為替レート:1 VND ≒ 0.0066 JPY で算出しています。

ベトナム最低賃金 次回改定予定について

2025年7月1日に地方行政体の再編(省・直轄市が63→34に統合)に伴い、新制度下で地域別最低賃金の適用が続く予定です。しかし、賃金水準自体は2024年7月のまま据え置きとなります。

ポイントとして:

  • 区域区分の行政変更が重要で、制度運用が見直されますが、金額改定はなし
  • 次の金額見直しは、現在まだ政府から具体的な発表はありませんが、例年通り年次調整があるとすれば 2025年末〜2026年初にかけてとなる可能性が高いです。
  • National Salary Council(国家賃金会議)やILO等は、今後もインフレ・生活費水準をモニターしながら調整提案を行うとされています。

ベトナム最低賃金に関わる本項のまとめ

現行最低賃金
・ 一般(GMW)= 2,340,000 VND/月(2023年7月改定)
・ 地域別(RMW)= 区域1~4で 3,450,000~4,960,000 VND/月(2024年7月改定)

次回予定:2025年7月に制度面で統合・再編が進むが金額はそのまま。
次の賃金改定は年末 ~ 2026年初を見込むものの、現時点では正式発表なし。

hanoi ba dinh

地域別最低賃金(RMW)の「+7%」ルールの概要

以前の別投稿でも触れましたが、ベトナムでは企業が従業員を雇用する際、「地域別最低賃金(RMW)」に加えて一定の上乗せを行う義務があります。この上乗せルールは、法令第38/2022/NĐ-CP(2022年7月施行)に基づいており、労働契約の内容や職務の性質によって異なります。

本ルールは、主に熟練労働者・技能労働者に適用される最低支払基準です。熟練の技術を持ち技能に優れた人材、特定のスキルを有する労働者に対して、単純労働者と同じ賃金を支払うことが不適切であるという考え方に基づいています。企業や個人が積極的に教育・訓練に投資する動機づけになる上、企業や個人が積極的に教育・訓練に投資する動機づけに繋がります。

「+7%」ルールの適用対象者と適用条件

企業が雇用する「技能・専門性を有する労働者」に対しては、地域別最低賃金に 少なくとも+7% を上乗せして支払う必要があります。

具体的には、以下のいずれかに該当する労働者が対象です:

  1.  専門学校(高等技術学校)卒業以上の学歴を持っている
  2.  **国家技能資格(技能認定)**を保有している
  3.  会社が定めた職種・職務において 技術的責任・熟練性を要する仕事を担っている

つまり「新卒の事務職」や「未経験の工場作業員」などは必ずしも7%上乗せの対象ではありません。ただし、「資格を持つ電気技師」や「加工経験者」などは対象になります。

 数字で見る「+7%」の例(2025年7月時点)

地域区分 通常のRMW(月額) +7%後の最低支給額 日本円換算(参考)
地域1 4,960,000 VND 約5,307,200 VND 約35,000円
地域2 4,410,000 VND 約4,718,700 VND 約31,500円
地域3 3,860,000 VND 約4,130,200 VND 約27,000円
地域4 3,450,000 VND 約3,691,500 VND 約24,000円

「+7%」ルールの適用対象者を雇用される場合には、企業が所在するエリアの最低賃金に+7%を加算した賃金以上の給与を支給する必要がございますので、ご留意ください。

「+7%」ルールの実務上の注意点(企業向け)

  • 労働契約書には「基本給」以外に「職能手当」「職務手当」「責任手当」などを組み合わせて構成してもよいですが、基本給がRMWを下回ってはいけません
  • RMW+7%はあくまで「基礎給与額」の水準であり、賞与・残業代・食事手当等は別枠です。
  • 当局(労働監督)による監査時、契約書や給与明細に基づいて適正かどうかを確認される可能性があります

◎ 根拠法令・資料

  • 政令第38/2022/NĐ-CP(2022年7月1日発効)
  • 労働法(2019年版)第91条〜第98条
  • 労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)通達

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以上、2025年7月時点におけるベトナムの地域別最低賃金に関する最新情報をお届けいたしました。
本内容に関してご不明点やご相談等がございましたら、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。