海外進出を検討する企業にとって、ベトナムは有力な進出先の一つとされています。
一方で、日本とは異なる制度やビジネス環境の中で事業を行うため、計画通りに進まないケースも少なくありません。
実際に、進出後に事業運営が軌道に乗らず、数年以内に撤退する企業も一定数存在します。
そのため、ベトナム進出を検討する際には、メリットだけでなく「どのような点で失敗が起こりやすいのか」を事前に理解しておくことが重要です。
本記事では、ベトナム進出でよく見られる失敗のポイントと、その背景について具体的に解説します。
ベトナム進出でよくある失敗の背景
海外進出では、日本国内とは異なる制度・商習慣・人材環境の中で事業を行うことになります。
そのため、事前の準備や前提条件の認識にズレがあると、進出後に想定外の課題が発生します。
特に、以下のような要因が重なることで、事業運営に影響が出るケースが多く見られます。
- 現地制度(税務・労務・投資規制)の理解不足
- 事業計画の見込みの甘さ(売上・コスト・期間)
- 現地人材のマネジメントの難しさ
- 日本との市場環境・商習慣の違い
ベトナム進出でよく見られる失敗のポイント
想定以上のコスト負担
海外拠点の運営では、日本とは異なるコスト構造になります。
例えば以下のような費用が想定以上に膨らむケースがあります。
- 日本人駐在員の人件費(年間800万〜1,200万円程度になるケースも)
- オフィス・工場賃料(エリアによっては日本と同水準)
- 許認可・税務・労務対応に関する外部専門家費用
特に、日本人駐在員を派遣する場合は、給与に加えて個人所得税(PIT)や社会保険の負担も発生します。
制度の理解不足により、後からコストが増加するケースも少なくありません。
ベトナム日本人駐在員の社会保険と個人所得税については、以下の記事でも紹介しています。
ベトナム日本人駐在員の社会保険と個人所得税(PIT)について
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/social-insurance-and-pit/
事業開始までの遅れ
ベトナムでの事業開始には、会社設立・ライセンス取得・設備導入など複数のプロセスが必要です。
例えば、
- 会社設立に3〜6ヶ月以上かかる
- 輸入手続きや設備搬入でさらに数ヶ月遅延
- 許認可の追加対応でスケジュールが後ろ倒し
といったケースもあります。
結果として、売上が立たない期間が想定より長引き、資金計画に影響が出ることがあります。
ベトナム進出の全体的なステップについては、以下の記事でも紹介しています。
ベトナム進出の流れをわかりやすく解説(会社設立までのステップ)
https://vietnam-shinshutsu.com/vietnam-market-entry-guide/vietnam-entry-process/
品質管理・業務運営の難しさ
製造業やサービス業では、日本と同水準の品質をそのまま現地で再現することは簡単ではありません。
よくあるケースとして、
- 現地スタッフへの教育不足により品質が安定しない
- 業務フローが属人化し、ミスや手戻りが増える
- 日本側の基準が現地で正しく共有されない
といった課題が発生します。
その結果、クレーム増加や取引先からの信用低下につながる可能性があります。
法制度への対応不足
ベトナムでは、税務・労務・投資規制などの制度が日本と大きく異なります。
例えば、
- 税務申告の頻度や方法が異なる
- 社会保険の適用範囲が複雑
- 外資規制により事業内容が制限される場合がある
といった点があります。
制度の理解が不十分なまま進出すると、手続きの遅れや行政対応の負担増加につながることがあります。
ベトナム進出のリスクについては、以下の記事でも紹介しています。
ベトナム進出における主なリスク
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/risk/
実際によくある失敗パターン
ここでは、実際に見られる代表的な失敗パターンを紹介します。
想定以上の固定費による資金圧迫
進出前の事業計画では問題がないように見えても、実際に運営を開始すると固定費が想定以上に膨らむケースがあります。
特に多いのが日本人駐在員に関するコストです。
ベトナムでは、給与だけでなく、住居費・ビザ取得費用・航空費用なども含めて課税対象となる場合があり、さらに日本側給与も含めた課税対応が必要になることがあります。
その結果、売上が立つ前の段階でコストだけが先行し、資金繰りが厳しくなるケースが見られます。 実際に、進出後1年で累計赤字が数千万円規模に膨らむケースも見られます。
売上計画の遅れによる赤字拡大
事業計画では「〇ヶ月後に売上開始」と見込んでいても、実際にはスケジュール通りに進まないケースが多くあります。
例えば、
- 設備の輸入や通関手続きの遅れ
- 現地スタッフの教育に想定以上の時間がかかる
- 言語や理解度の問題で技術移転が進まない
といった要因により、売上開始が大幅に遅れ、赤字期間が長期化するケースがあります。
品質不良やサービス低下によるロス発生
日本と同じ設備・原材料を使用していても、現地で同じ品質を再現できるとは限りません。
実際には、
- 不良品の増加
- サービス品質の低下によるクレーム
- 作業ミスや手戻りの増加
といった問題が発生し、本来得られるはずの利益が「ロス」として削られるケースが多く見られます。
法制度の理解不足によるリスク
ベトナムでは、税務・関税・労務などの制度が日本と異なり、運用も変化することがあります。
例えば、
- 税務処理の誤りによる追徴課税
- 突然の規制変更(輸入規制や課税ルール)
- 地域ごとの運用差による対応負担
などにより、想定外のコストや行政対応が発生し、事業に影響を与えるケースがあります。
これらの失敗に共通しているのは、
「進出前の前提と、現地の実態にギャップがあること」です。
より詳しい失敗事例については、以下の記事でも紹介しています。
ベトナム進出が失敗する企業の4つの事例
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/failure-cases/
まとめ|失敗を防ぐために重要なポイント
ベトナム進出は、市場拡大や生産拠点の確保といった大きな可能性がある一方で、制度・コスト・人材・市場環境など、日本とは異なる要素への対応が求められます。
実際の進出では、「想定とのズレ」が積み重なることで、コスト増加やスケジュール遅延、品質低下といった課題につながるケースも少なくありません。
進出を成功させるためには、以下のようなポイントを事前に整理しておくことが重要です。
・コスト・スケジュールを現実的に見積もる(売上が立たない期間も含めて検討する)
・現地制度(税務・労務・投資規制)を理解する
・人材・品質管理の体制を事前に設計する
・市場や顧客ニーズを十分に把握する
また、「そもそも自社がベトナム進出に適しているのか」という視点での検討も重要です。
実際にご相談いただくケースでも、進出の可否や進め方は企業ごとに大きく異なります。
そのため、自社の状況に応じて段階的に検討を進めることが、進出後のリスクを抑えるポイントとなります。
当サイトでは、ベトナム進出に関する制度や実務情報、具体的な事例についても紹介しています。
あわせて以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】
・ベトナム日本人駐在員の社会保険と個人所得税(PIT)について
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/social-insurance-and-pit/
・ベトナム進出の流れをわかりやすく解説(会社設立までのステップ)
https://vietnam-shinshutsu.com/vietnam-market-entry-guide/vietnam-entry-process/
・ベトナム進出が失敗する企業の事例
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/failure-cases/
・ベトナム進出における主なリスク
https://vietnam-shinshutsu.com/helpful-info/risk/
本内容に関するご質問や詳細なご相談、ベトナム進出や現地法人の税務対応についてご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。







