【2026年施行】ベトナムVAT政令359/2025/NĐ-CPの概要

政令359/2025/NĐ-CPの概要と企業実務への影響

2025年12月、ベトナム国会は付加価値税(VAT)制度の枠組みを見直す 改正付加価値税法(Luật Thuế giá trị gia tăng sửa đổi 2025/法律149/2025/QH15) を可決し、2026年1月1日から施行されました。
この法律149号は、VAT制度の基本構造そのものを定める「上位法」として、課税対象、免税・非課税の考え方、還付制度の方向性などを整理したものです。

そして、その法律149号の内容を実務レベルで具体化する役割を担うのが、2025年12月31日に公布された 「Nghị định 359/2025/NĐ-CP(以下、政令359号)」 です。
政令359号は、VAT法の施行細則を定める既存の 政令181/2025/NĐ-CP を修正・補完する形で制定されており、企業の日常的なVAT申告・請求書処理・還付対応に直接影響を与える内容となっています。

本記事では、すでに紹介した改正付加価値税法(149号)からの流れを踏まえつつ、政令359号の位置づけ、改正の背景、主な変更点、そして企業実務への影響を整理します。

政令359号の基本情報

まず、政令359号の概要は以下のとおりです。

  • 法令名:Nghị định 359/2025/NĐ-CP
  • 公布日:2025年12月31日
  • 施行日:2026年1月1日
  • 改正対象:Nghị định 181/2025/NĐ-CP(付加価値税法の施行細則)
  • 主な目的:
    • 改正付加価値税法(149号)の内容を実務に落とし込む
    • VAT取扱いに関する解釈のばらつきを是正
    • 還付・控除・非課税規定の運用を明確化

政令359号は、新たな税率や税目を導入するものではありませんが、企業が実際にどのようにVATを処理すべきかを判断するうえで、極めて重要な法令といえます。

法律149号から政令359号へ ― 制度設計の流れ

改正付加価値税法(149号)は、「VAT制度の方向性」を示す法律です。
一方で、法律の条文だけでは、次のような点が曖昧なまま残りがちでした。

  • 一次産品は、どの取引段階でVAT課税対象となるのか
  • 企業向け販売と個人向け販売で、VAT処理はどう変わるのか
  • 還付申請において、どこまで相手方の申告状況を確認すべきか

こうした実務判断が必要な論点について、法律149号の内容を具体的に補足・整理するために制定されたのが政令359号です。

政令359号の改正背景

ベトナムのVAT制度では、長年にわたり次のような課題が指摘されてきました。

  • 税務署ごとにVATの解釈や指導が異なる
  • 農林水産物など一次産品の扱いが不明確
  • VAT還付に時間がかかり、企業の資金繰りを圧迫する

特に、政令181号だけでは判断が難しいケースが多く、企業側が「安全側」に倒した申告を行わざるを得ない場面も少なくありませんでした。

政令359号は、こうした課題を踏まえ、
「課税するのか/しないのか」
「控除できるのか/できないのか」
を条文レベルで整理することを目的として制定されています。

政令359号の主な改正ポイント

一次産品に関するVAT取扱いの明確化

政令359号で特に重要なのが、農林水産物などの一次製品(一次産品)のVAT取扱いです。

政令では、以下のような製品が対象として整理されています。

  • 農産物、林産物
  • 畜産物
  • 養殖水産物、漁獲物
  • 加工されていない、または最低限の前処理のみの製品

これらの一次産品について、企業や協同組合間で取引される場合には、

  • 売上に対するVATの申告・納付は不要
  • ただし、仕入時に支払ったVATは控除可能

という取扱いが明確に示されました。

この整理により、農業関連商社や食品原料を扱う企業では、取引形態ごとのVAT処理をより正確に判断できるようになります。

販売先に応じたVAT処理の区分

政令359号では、販売先の属性によってVATの扱いが異なる点も明確化されています。

  • 企業・協同組合向け販売
  • 個人事業者・非企業向け販売
  • 直接計算方式(簡易方式)での取引

これにより、「同じ商品でも、売り先が変わればVAT処理も変わる」という原則が、より明確になりました。
複数の販売チャネルを持つ企業では、契約内容や請求書発行方法を含めた整理が不可欠となります。

VAT還付制度の運用改善

法律149号で示されたVAT還付制度の見直し方針は、政令359号によって実務面に反映されています。

特に重要なのが、
「売手側がすでにVAT申告・納付をしていること」
を還付要件として厳格に求めない運用が示された点です。

これにより、

  • 輸出企業
  • 仕入税額が大きい企業

にとって、VAT還付がより現実的に活用しやすくなることが期待されます。

不要条項・経過措置規定の整理

政令359号では、政令181号に含まれていた一部の条文について、役割を終えた経過措置として廃止しています。

これにより、

  • 古い制度との二重解釈
  • 不要な条文参照による混乱

が軽減され、VAT制度全体の構造がシンプルになります。

企業実務への影響

政令359号は、特定業種だけでなく、VAT取引が発生するほぼすべての企業に影響します。

特に影響が大きいのは、以下のような企業です。

  • 農林水産物・一次原料を扱う企業
  • 輸出取引を行いVAT還付を申請する企業
  • 企業向け・個人向け販売が混在する事業モデルを持つ企業

これらの企業では、

  • VAT区分の再整理
  • 帳簿・請求書ルールの見直し
  • 社内マニュアルの更新

といった対応が求められます。

施行時期と対応のポイント

政令359/2025/NĐ-CPは、2026年1月1日より施行されており、

改正付加価値税法(法律149/2025/QH15)と同時に適用されています。

本政令の施行により、2026年以降の取引については、すでに新しいVATルールを前提とした処理が求められる状況となっています。

そのため企業としては、以下の対応を継続的に実施・確認していくことが重要です。

  • 既存および新規取引について、VAT区分(課税・非課税・控除可否)の再確認

  • 2026年以降の取引における申告・インボイス・会計処理が、政令359号の内容に沿って行われているかの検証

  • 税務顧問・会計担当者との間で、改正内容および実務対応方針の共有・すり合わせ

特に、一次産品の取扱いや販売先区分に応じたVAT処理については、従来の運用との違いが生じやすいため、定期的なチェックと社内ルールの見直しが欠かせません。

まとめ

政令359/2025/NĐ-CPは、改正付加価値税法(149/2025/QH15)の内容を、企業実務に落とし込むための重要な施行政令です。
一次産品のVAT取扱い、販売先別の課税区分、VAT還付制度の運用改善など、日常業務に直結する論点が数多く整理されています。

2026年以降のVAT対応を安定させるためには、法律149号と政令359号をセットで理解することが不可欠です。
今後も関連する通達や税務当局の運用指針が公表される可能性があるため、継続的な情報収集と実務対応の見直しが求められます。

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