– 2020年ベトナム新投資法について-
投資禁止分野、条件付き付き投資分野、投資優遇分野など
2020年の5月-6月に開催されたベトナム第14期第9回会議(2020年6月17日)において、新投資法(61/2020/QH14)が可決されました。
この2020年 新投資法は、現行法である2014年投資法(67/2014/QH13)の内容を改正するものであり、一部の条項を除いて、2021年1月1日から施行されます。
施行まで1ヶ月をきりましたので、本項では、改正ポイントをまとめて解説させて頂きます。
ベトナム新投資法(61/2020/QH14)の改正ポイント
1. 投資禁止分野に関する改正
2. 条件付き投資分野の項目削減
3. 投資優遇分野の追加
4. 創造的スタートアップ投資プロジェクトへの優遇
5. 外資企業の定義修正
1. 投資禁止分野に関する改正
ベトナム2020年投資法では、第1章の第6条において、債権回収事業が投資禁止分野に追加されました。
2007年に「債権回収サービスの提供に関する政府議定(政令)」が制定されてから事業として成立していましたが、一部の事業者の活動内容が問題視される事例が多く発生したため、投資禁止分野に位置付けられることになりました。
投資禁止分野は、現行法においても、一部の化学薬品や鉱物の取引事業、絶滅危惧の野生動植物の取引事業など、いくつか定められていましたが、その中に「債権回収事業」も、これまで条件付き投資分野だった爆竹の関連事業と共に禁止分野へ追加される形になりました。
2. 条件付き投資分野の項目削減
ベトナムには、政府が無条件で推奨している投資分野がある反面、条件付きで投資を認めている分野もあります。
現行法である2014年投資法(67/2014/QH13)付録Ⅳ「条件付き投資分野リスト」においては、条件付き分野・業種が「267分野」ありましたが、2020年新投資法(61/2020/QH14)では、それが大きく緩和されました。
これまで「条件付き投資分野リスト」に含まれていた「フランチャイズビジネス、ヘルメットの製造、広告サービス」などの項目を中心に削除され、条件付き投資分野は「227分野」まで減少。
この改正によって、関連する日本企業によるベトナム投資はこれまでに以上に容易になるでしょう。
3. 投資優遇分野の追加
ベトナム政府が推奨する分野へ投資する際、他分野への投資にはない優遇措置(インセンティブ)を受けることができます。ベトナム2020年投資法では、第3章の第16条において、いくつかの分野が優遇投資分野へ追加されました。
例えば、教育分野はこれまでも優遇投資分野の一つでしたが、幼児教育,普通教育,職業教育に加えて、新たに「大学教育」が追加されたり、「医療機器の製造」や「バリューチェーンの実施・産業クラスターの構築に関わるサービスの提供や商品の開発を行う事業」もインセンティブを享受できる対象分野となりました。
これらの社会に必要とされる分野が「投資優遇分野」に位置付けされることは、外資・内資の投資に追い風になることに加え、ベトナム社会のさらなる発展にも繋がるので喜ばしいことですね。
4. 創造的スタートアップ投資プロジェクトへの優遇
2020年ベトナム新投資法(61/2020/QH14)において、「創造的スタートアップ投資プロジェクト」に関する文言が新たに追加されました。「創造的スタートアップ投資プロジェクト」は第3条、および中小企業支援法において、「アイデア・技術などの知的財産を開発し大きな成長が見込める事業を実施する新興企業とそのプロジェクト」と言う意味合いで定義され、本法でも様々なインセンティブ(優遇措置)が受けられることが明記されています。
その「創造的スタートアップ投資企業」が受けれるインセンティブとして、法人税、土地使用権、通関面での優遇がありますが、最も注目すべきは、法人登記時における優遇です。
第4章の22条では、法人登記について記載されています。通常、現地で法人を設立する際、一般的には投資登録証明書 (IRC=Investment Registration Certificate/Giấy chứng nhận đăng ký đầu tư)、企業登録証明書(ERC=Enterprise Registration Certificate/Giấy chứng nhận đăng ký kinh doanh)の二つのライセンスを取得しなければなりませんが、「IRCの取得は創造的スタートアップ投資企業および創造的スタートアップ投資基金を除いて…」という一文が追加されていることから、「創造的スタートアップ投資企業」はIRCの取得が不要になりました。
IRCを取得するまでの期間として、通常は2週間-1ヶ月程度かかることから、このIRC取得免除に対する優遇措置は特別であり、申請期間の大きな短縮化が可能になります。
上述のインセンティブが追加されたことで、知的財産に関連したビジネスを実施する新興企業の保護・拡大を目指していく政府の意向が読み取れますね。このように政策として、特別な知的財産を持つ企業の拡大をサポートすることはとても良い取り組みではないでしょうか。
5. 外資企業の定義修正
最後のポイントとして、2020年ベトナム新投資法(61/2020/QH14)の第22条では、現地企業への出資、株式購入、持分取得において、その投資先企業を外資企業と見なすどうかの基準が変更されました。
この定義に当てはまる場合は、外国資本企業に対する条件を満たす必要があると明記されていることから、投資先企業が「外資規制」を受ける企業かどうかを判断する基準となりますが、定款資本の50%を超える資本を保有する場合は、「外国資本」と見なすと定義されました。
(現行法 : 2014年投資法 67/2014/QH13においては、この割合は51%でした)
現地企業への出資、現地企業と合弁会社を設立する際などで、外資規制が懸念点となる場合には、御注意ください。
以上、ベトナム2020年新投資法(61/2020/QH14)における改正ポイント5点について、解説させていただきました。
基本は現行の2014年投資法(67/2014/QH13)を引き継いだ法律ですので、ベトナムへ既に投資をされている企業様、これから投資を検討されている企業様にとって大きな影響は無いかと存じますが、 上述のような変更点があったこと、また本新法が1ヶ月後の2021年1月1日になること、ぜひ御承知頂ければと思います。
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