2026年7月15日、ベトナム政府は、労働、社会保険および契約に基づくベトナム人労働者の海外就労に関する行政違反の処罰を定める政令283/2026/NĐ-CP(以下「政令283」)を公布しました。
政令283は、2026年9月10日から施行され、これまで関連する行政違反の処罰を定めていた政令12/2022/NĐ-CPに代わる新たな規定となります。
対象となる分野は幅広いものの、日本企業にとっては、特に外国人労働者、労働登録、社会保険・失業保険に関する規定を確認しておくことが重要です。
政令283/2026/NĐ-CPとは?
政令283は、ベトナムの労働、社会保険、契約に基づくベトナム人労働者の海外就労について、行政違反となる行為や罰金、追加的な処分、違反後に必要となる是正措置などを定めた政令です。
| 項目 | 内容 |
| 政令 | 283/2026/NĐ-CP |
| 公布日 | 2026年7月15日 |
| 施行日 | 2026年9月10日 |
| 旧政令 | 12/2022/NĐ-CP |
| 主な対象 | 労働、社会保険、ベトナム人労働者の海外就労 |
政令283では、違反内容に応じて罰金だけでなく、書類等の没収、外国人労働者の国外退去、必要な手続きを改めて行うことなどの処分・是正措置が定められています。
罰金額を見る際の注意点
政令283第7条では、原則として第II~IV章に定められた罰金額は個人に対する基準額とされています。
企業などの組織が違反した場合は、原則として個人に対する罰金額の2倍となります。日本企業が実際に負担する罰金を確認する際には、この点に注意が必要です。
外国人労働者に関する罰則
日本企業にとって特に注意したいのが、ベトナムで働く日本人駐在員などの外国人労働者の管理です。
政令283第13条では、外国人労働者に関する届出、労働許可証等の内容、許可証等の回収・返却、無許可・期限切れでの就労、申請書類の改ざん・偽造などについて罰則が定められています。
労働許可証等の内容と実際の仕事が異なる場合
外国人労働者を、労働許可証または労働許可証免除の確認書に記載された内容と異なる形で就労させた場合、罰則の対象となります。
また、労働許可証等を適切に回収しなかった場合や、回収した許可証等を所管機関へ返却しなかった場合も対象となります。
罰金は、違反した外国人労働者1人につき500万~1,000万VND、総額7,500万VNDを上限としています。
外国人従業員の退職や契約終了などが発生した際には、就労資格だけでなく、許可証等の回収・返却まで適切に行うことが重要です。
無許可・期限切れの外国人を雇用した場合
労働許可証等を取得していない外国人、または期限切れの労働許可証等を使用している外国人を企業が就労させた場合、違反した外国人の人数に応じて罰金が科されます。
政令上の基準額は次のとおりです。
| 違反した外国人の人数 | 政令上の基準額 | 組織に適用される罰金額※ |
| 1~10人 | 3,000万~4,500万VND | 6,000万~9,000万VND |
| 11~20人 | 4,500万~6,000万VND | 9,000万~1億2,000万VND |
| 21人以上 | 6,000万~7,500万VND | 1億2,000万~1億5,000万VND |
※政令第7条に基づき、組織については原則2倍。
外国人を雇用する企業では、労働許可証の取得状況だけでなく、有効期限についても継続的に管理することが必要です。
外国人労働者本人にも罰則
外国人労働者本人が、労働許可証等を取得せずに就労した場合や、期限切れの許可証等を使用した場合には、1,500万~2,500万VNDの罰金が定められています。
また、一定の場合には外国人労働者の国外退去が追加的な処分として行われる可能性があります。
申請書類の改ざん・偽造にも注意
外国人の労働許可証等の申請に際して、書類や資料を改ざん・偽装したり、偽造された書類を使用したりした場合も処罰の対象です。
具体的には、労働許可証等の申請・再発行・延長に関する書類を改ざんした場合や、偽造された書類を使用した場合、4,000万~6,000万VNDの罰金が定められています。刑事責任を問われる場合は、行政処分の対象とはなりません。
さらに、改ざん・偽造された書類等は没収の対象となり、一定の場合には外国人労働者の国外退去も行われます。
外国人の採用手続きを外部業者に委託している場合でも、申請内容や提出書類を企業側で確認しておくことが重要です。
労働登録に関する罰則
政令283第12条では、労働登録(đăng ký lao động)や登録情報の変更に関する罰則が設けられています。
社会保険への加入・変更手続きを行う際に、必要な労働登録や登録情報の変更を行っていない場合、使用者が処罰の対象となります。
政令上の基準額は次のとおりです。
| 対象となる労働者数 | 政令上の基準額 | 企業等の場合※ |
| 1~50人 | 500万~1,000万VND | 1,000万~2,000万VND |
| 51~100人 | 1,000万~1,500万VND | 2,000万~3,000万VND |
| 101人以上 | 1,500万~2,000万VND | 3,000万~4,000万VND |
※組織については原則2倍。
違反した場合には、罰金だけでなく、労働登録または登録情報の変更を実施することも求められます。
社会保険・失業保険に関する罰則
政令283では、社会保険・失業保険についても違反行為と罰則が整理されています。
特に企業が確認したいのが、加入対象者の登録漏れ・登録不足、納付遅延、納付逃れです。
強制社会保険の登録漏れ・登録不足
強制社会保険の加入対象となる労働者について、所定の期限までに加入者として登録していない場合や、実際の加入対象者数よりも少ない人数を登録している場合、使用者が処罰の対象となります。
この違反については、違反した労働者数に応じた罰金が定められています。また、違反した場合には、未登録となっている労働者について必要な登録手続きを行うことも求められます。
社会保険料の納付遅延
社会保険の加入者として適切に登録されていても、保険料を納付期限までに納付しない場合には、「納付遅延(chậm đóng)」として処罰の対象となる可能性があります。
政令283では、一定の納付遅延について、未納額の12~15%の罰金が定められています。
また、罰金とは別に、未納となっている社会保険料を納付するとともに、法律で定められた加算額を支払うことが求められる場合があります。
社会保険料の納付逃れ
「納付遅延」とは別に、法律上「納付逃れ(trốn đóng)」に該当する場合には、より重い罰則が適用されます。
政令283では、納付逃れについて、未納額の18~20%の罰金が定められています。
さらに、未納となっている社会保険料および法律で定められた加算額を納付することも求められます。
失業保険についても確認が必要
失業保険についても、加入対象者の登録不足、保険料の納付遅延、納付逃れなどについて罰則が定められています。
また、一定の納付遅延については、違反額が40万VND未満の場合に警告とする規定があります。
そのため、企業は社会保険・失業保険について、単に「保険料を支払っているか」だけではなく、以下の3つの観点から確認することが重要です。
- 加入対象者が正しく登録されているか
- 登録内容と実際の雇用状況が一致しているか
- 保険料を期限内に納付しているか
このように整理すると、「登録の問題」と「納付の問題」を明確に区別できます。
なお、「登録漏れ・登録不足」と「納付遅延」は必ずしも同じ違反ではありません。登録されていないこと自体が問題になるケースと、登録はされているものの保険料を期限内に納付していないケースを分けて説明するのが、法律記事としても適切です。
日本企業が施行前に確認したいポイント
政令283の施行を前に、ベトナムに進出している日本企業は、次の項目を確認しておくとよいでしょう。
外国人労働者
労働許可証や免除確認書の有無だけでなく、記載された職務・就労内容と実際の勤務状況が一致しているかを確認します。
あわせて、許可証等の有効期限や、退職・契約終了時の回収・返却についても確認しておきましょう。
労働登録
従業員の採用や登録情報の変更に伴い、必要な労働登録・変更手続きが行われているか確認します。
特に、労働登録と社会保険の情報に食い違いがないかを確認することが重要です。
社会保険・失業保険
加入対象者の登録漏れがないか、登録人数や登録内容が実際の雇用状況と一致しているかを確認します。
あわせて、保険料の納付状況や納付期限についても確認しておくとよいでしょう。
外部委託している手続きも確認
労働許可証の取得や社会保険手続きを外部の専門業者などに依頼している企業であっても、最終的には自社の従業員情報と各種登録内容が一致しているかを確認することが重要です。
まとめ
政令283/2026/NĐ-CPは、2026年9月10日から施行されます。
労働、社会保険、ベトナム人労働者の海外就労など幅広い分野を対象としていますが、日本企業にとっては、特に外国人労働者、労働登録、社会保険・失業保険に関する規定を確認しておくことが重要です。
外国人労働者については、労働許可証の取得だけでなく、許可証の内容、有効期限、回収・返却、申請書類の適正性まで含めて管理する必要があります。
また、労働登録や社会保険についても、従業員の入社・退職・情報変更などに合わせて必要な手続きが適切に行われているか、施行前に一度確認しておくとよいでしょう。
ベトナムで法人を運営する日本企業にとって、政令283は日常的な労務管理にも関係する重要な規定です。施行を機に、外国人労働者の管理だけでなく、労働登録と社会保険の手続きまで含めて自社の管理体制を見直すことをおすすめします。
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※本記事は2026年8月時点で確認できる法令情報をもとに作成しています。個別の事案については、最新の法令および現地専門家への確認が必要です。
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