ベトナム政府は2026年8月13日、電子識別・電子認証に関する政令320/2026/NĐ-CPを公布しました。
今回の改正では、外国人の電子識別アカウントの取得条件が見直され、TRC(Temporary Residence Card:一時滞在カード)や永住カードを保有していない外国人も、ベトナムに合法的に入国・居住していることを前提として、必要に応じて取得できるようになります。
本記事では、外国人に関係する主な変更点を中心に、政令320/2026/NĐ-CPのポイントを解説します。
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政令320/2026/NĐ-CPとは?
政令320/2026/NĐ-CPは、政令69/2024/NĐ-CPの一部規定を改正・補足する政令です。
政令69/2024/NĐ-CPは、ベトナムにおける電子識別・電子認証について定める基本的な政令です。
今回の政令320では、外国人の電子識別アカウントに関する規定のほか、電子的に登録・統合された情報や書類の利用などについても見直されています。
政令320/2026/NĐ-CPは、2026年9月28日から施行されます。
外国人やベトナムで事業を行う日本企業にとって、特に確認しておきたいポイントは以下のとおりです。
| 変更点 | 改正後の取り扱い |
| 外国人の電子識別アカウント | ベトナムに合法的に入国または合法的に居住する外国人の中で、必要に応じて電子識別アカウントを取得できる |
| TRC・永住カード | 保有していなくても取得対象 |
| 外国人のレベル1・レベル2 | 区分を廃止 |
| VNeIDに統合された書類 | 統合済みの情報・書類について、原則として同じ書類の提出・提示を求めない |
| 電子取引アカウント | 一部の分野で電子識別アカウントとの連携を求める規定を追加 |
中でも、日本人駐在員や外国人社員にとって重要なのが、電子識別アカウントの取得条件の変更です。
TRCを保有していない外国人もVNeIDを取得可能に
今回の政令320/2026/NĐ-CPによる改正で、外国人がTRCや永住カードを保有していなくても、電子識別アカウントを取得できるようになることが大きなポイントです。
従来の政令69/2024/NĐ-CPでは、外国人が電子識別アカウントを取得する際、原則としてTRC(Temporary Residence Card:一時滞在カード)や永住カードの保有が前提となっていました。
そのため、日本から代表者を赴任させていない企業などでは、TRCを取得している外国人がいないことから、VNeIDの申請が難しいケースもありました。
今回の改正では、この点が見直され、TRCや永住カードを保有していない外国人であっても、ベトナムに合法的に入国・居住している場合には、必要に応じて電子識別アカウントを申請・取得できるようになります。
つまり、これまでTRCの取得がVNeID利用の大きなハードルとなっていた企業にとって、電子識別制度を利用できる可能性が広がる重要な改正といえます。
ただし、TRCがなくても無条件に取得できるわけではなく、ベトナムへの合法的な入国・居住が前提となります。また、実際の申請方法や必要書類については、今後の運用を確認する必要があります。
外国人の「レベル1・レベル2」を廃止
外国人の電子識別アカウントについては、これまで「レベル1」「レベル2」という区分が設けられていました。
政令320/2026/NĐ-CPでは、外国人についてレベルによる区分を設けない仕組みへ変更されます。
そのため、現在の制度を前提に「外国人はレベル2を取得する」という考え方も見直す必要があります。
なお、今回の改正は外国人についてのレベル区分の変更であり、ベトナム国民についてまで一律にレベル1・レベル2が廃止されるものではありません。
VNeIDに統合された書類は再提出不要に
政令320/2026/NĐ-CPでは、電子識別アカウントだけでなく、VNeIDに統合された情報・書類の利用についてもルールが見直されています。
行政手続や公共サービス、一定の民事上の取引などで、すでにVNeIDに必要な情報・書類のデータが統合されている場合、同じ書類の原本やコピーを改めて提出・提示することを求めないという仕組みが整備されます。
さらに、VNeIDに統合・更新できる書類として、個人向け66種類、機関・組織向け140種類、合計206種類の書類に関するリストも追加されています。
電子取引アカウントとの連携も進む
今回の改正では、電子識別アカウントと各種オンラインサービスのアカウントを連携させる仕組みも追加されています。
対象となる分野には、教育、証券、通信、銀行、電子商取引、電子請求書、運輸・観光、医薬品、医療、ベトナム国内のSNSなどが含まれます。
今後、ベトナム国内でオンラインサービスを利用する企業や個人は、利用するサービスが電子識別アカウントとの連携対象となっているか確認する必要があります。
日本企業・外国人駐在員への影響
今回の改正は、ベトナム現地法人で働く日本人駐在員や外国人社員にも関係します。
特に、これまでTRCなどの保有状況が電子識別アカウント取得の条件となっていた外国人について、取得対象の考え方が変わるため、社内で案内している手続や必要書類について確認しておくことが重要です。
また、VNeIDに統合された情報・書類を行政手続などで利用できるようになることで、企業側の書類準備や手続方法にも影響する可能性があります。
まとめ
政令320/2026/NĐ-CPは、2026年9月28日から施行されます。
今回の改正は、外国人の電子識別アカウント取得要件を見直すとともに、VNeIDに統合された情報・書類の活用や電子取引との連携など、電子識別・認証制度の運用を見直すものです。
特に、TRCや永住カードを保有していない外国人についても、ベトナムへの合法的な入国・居住を前提として、必要に応じて電子識別アカウントを申請・取得できるようになる点は、日本企業にとって重要な変更です。
これまでTRCの取得がVNeID利用の前提となっていた企業では、今回の改正によって外国人社員が電子識別アカウントを取得できる可能性が広がります。また、外国人のレベル区分の見直しやVNeID上の情報・書類の活用範囲の拡大により、ベトナムでの行政手続やオンラインサービスの利用環境も変化すると考えられます。
今回の改正は、外国人のVNeID取得条件だけでなく、ベトナムにおける本人確認や行政手続、電子取引のデジタル化にも関わる重要な制度変更です。 日本企業においても、外国人駐在員・社員の手続だけでなく、現地法人が利用するオンラインサービスへの影響を含め、今後の運用を確認しておくことが重要です。
なお、施行後の具体的な申請方法や運用については、今後、公安当局等から追加の案内が出る可能性があります。弊社でも引き続き情報を確認し、必要に応じて最新情報をお届けしてまいります。
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