政令340/2025/NĐ-CPとは?通貨・銀行分野における行政処分強化のポイントを解説
2025年12月25日、ベトナム政府は通貨・銀行分野における行政違反への罰則を包括的に定めた「政令340/2025/NĐ-CP(Decree 340/2025/NĐ-CP)」を公布しました。
本政令は 2026年2月9日より施行 され、これまで適用されてきた 政令88/2019/NĐ-CP を全面的に置き換えるものです。金融・為替管理体制の高度化、デジタル決済の拡大、国際的なマネーロンダリング対策強化の流れを背景に、罰則体系を再構築した重要な改正といえます。
本項では、ベトナムで事業を展開する日系企業、金融関連企業、投資家の皆様に向けて、政令340/2025/NĐ-CPの基本情報、改正の背景、実務上の留意点を整理して解説します。
政令340/2025/NĐ-CP 基本情報
- 正式名称:Decree No. 340/2025/NĐ-CP
- 公布日:2025年12月25日
- 施行日:2026年2月9日
- 発行主体:ベトナム政府
- 主管機関:ベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam:SBV)
- 対象分野:通貨管理、銀行業務、外国為替、金取引、支払サービス・電子決済、AML(マネロン対策)、報告・統計義務、信用情報・IT管理など
- 法的性質:通貨・銀行に関連する行政違反とその処罰規定を体系化した政令
- 置き換え対象:従前の政令88/2019/NĐ-CPを全面的に更新・再編
なぜ政令340が制定されたのか?
国際的な金融取引の高度化やベトナム内外の資金移動の活発化に伴い、従来制度だけでは対応しきれない不正取引リスクが顕在化していました。特に外国為替や電子決済の分野では、誤った理解や慣習による非公式取引が横行するおそれがありました。
このような背景から、政令340/2025/NĐ-CPは「法令体系の現代化」と「実効性ある罰則導入」を目的に制定されました。
政令340の対象範囲
政令340がカバーするのは、従来の銀行業務に加えて、
- 外国為替取引
- 電子決済サービス
- 支払決済事業者
- 反マネーロンダリング(AML)関連義務
- 報告・統計義務
- 信用情報・システム管理
といった、今後の金融システム全般に関わる分野です。これは「金融機関だけでなく、広く市場参加者にも影響する」ということを意味します。
外国為替(FX)関連規制の強化と「正式ルート」の重要性
政令340で最も注目を集めている規定の一つが、外国為替取引に関する明確な罰則ルールです。外貨の取扱いについては、ベトナム国家銀行(SBV)の許可を受けた正規の機関でのみ行うことが原則とされています。
ここで重要なのが、「正式ルート(正規の取引先)」の定義です。
◆ 外貨取引の正式ルートとは?
正式ルートとは、具体的には以下のような機関を指します。
- ベトナム国家銀行(SBV)から許可された銀行・金融機関
→ 商業銀行、外国銀行支店など - 認可を受けた外貨両替所・送金サービス事業者
→ 許可された為替取扱業者 - 法的な送金・為替サービスを提供する全ての正式登録事業者
これら以外の者と行う外貨売買や送金は、政令340により違法行為とみなされ、処罰対象となります。
◆ 正規ルートでない取引がなぜ問題なのか?
正規ルートを外れた外貨取引は、次のようなリスクをはらんでいます。
- 資金の追跡ができないため不正取引に利用される
- マネーロンダリングや脱税の温床になりうる
- 顧客資産の保全が担保されない場合がある
- 金融システム全体の透明性低下に繋がる
政令340は、これらを未然に防ぐために罰則を設けています。
外国為替違反の罰則例(概要)
政令340は、無許可・非公式な外貨取引に対して段階的な罰則を設けています。具体的には、
- 少額の非公式取引
→ 警告または軽度の罰金 - 中規模の無許可取引
→ 数千万VNDレベルの罰金 - 大規模の非公式取引
→ 数億VNDレベルの重い罰金
といった形で、違反の規模に応じて処罰の重さも変わります。これは単なる禁止ではなく、取引規模に応じたリスク評価に基づく設計です。
制裁・罰則の体系(全体像)
政令340は、単に罰金を科すだけでなく、段階的な制裁措置を明確化しています。罰則体系は以下のとおりです。
◎ 基本制裁
- 警告
- 罰金(法人は個人より高い水準)
◎ 追加措置(重大違反の場合)
- 営業許可の一時停止
- 違法利益の没収
- 許認可の取り消し
- 責任者への処分勧告
これらは、例えば大規模送金・無許可決済システム運用など、重大なリスク発生の可能性が高いケースで適用され得ます。
マネーロンダリング対策(AML)や内部統制義務
政令340は、金融機関や関連企業に対しAML対策の強化も求めています。以下のような違反も罰則対象です。
- 顧客の本人確認(KYC)義務を果たさない
- 疑わしい取引を報告しない
- 内部管理体制が機能していない
- 取引データの保管・提出が不適切
これらは単なる書類上の義務ではなく、組織としてコンプライアンス体制を整備しているかどうかが問われるポイントです。
企業が取るべき実務対応
政令340は理論上の規定ではなく、日常業務へ影響する内容です。以下の点を押さえる必要があります。
✔ 外貨取引は正規ルートを必ず利用する
- 銀行・許可された送金業者で実施
- 社内でルールを文書化して周知
✔ 内部承認フローと資金移動規程の整備
- 社内の承認手順を明確化
- 定期的なモニタリング体制の導入
✔ スタッフへのコンプライアンス教育
- 国内慣行とのズレを解消
- 実務担当者向け研修の実施
✔ 外部監査・チェックの活用
- 規制対応の専門家による監査導入
- 定期的なコンプライアンスレビュー
政令340で何が変わったのか?
政令340は、単なる罰則強化ではありません。旧政令88/2019と比較して次の点が際立っています。
- 罰金水準の引き上げ
- 違反類型・処罰体系の細分化
- デジタル決済分野に関する明確な規定
- 外国為替違反の段階的整理
- コンプライアンス義務の具体化
これは、単なる行政罰規定の改正ではなく、現代の金融環境に即した包括的な制度改革です。
まとめ|ベトナム金融規制の最新動向
政令340/2025/NĐ-CPは、ベトナムの金融規制を一段と強固にする重要な法令です。とりわけ、
🔹 外貨取引の正規ルート遵守
🔹 組織的な内部統制・AML体制の強化
🔹 段階的な罰則適用の理解
が企業にとって実務対応上の重要ポイントとなります。
現地で事業を行う全ての企業は、法令内容の正確な理解と内部体制の整備を急ぐ必要があります。ベトナムの金融規制は今後も変化し続けると予想されるため、最新情報の継続的な把握が安定した事業運営を支える鍵となるでしょう。
本内容に関するご質問や詳細なご相談については、お気軽にお問い合わせください。




