【税務】企業の資本譲渡課税に関する新ルール 政令320/2025/ND-CP

政令320/2025/NĐ-CPの公布と実務への影響

2025年12月15日、ベトナム政府は、改正企業所得税法(法人税法第67/2025/QH15号)の施行細則を定める政令第320/2025/NĐ-CP号を公布し、同日付で施行しました。本政令は、企業所得税の計算方法や税率適用の前提条件を具体化するものであり、企業の通常の事業活動だけでなく、資本取引や組織再編といった非経常取引にも直接影響を与える内容となっています。

特に、外国法人が関与する資本譲渡取引に対する課税方法の見直しは、従来の実務慣行を大きく変更するものであり、日系企業や外資系企業にとって重要な検討テーマとなります。本稿では、政令320号のうち、資本譲渡課税に関する改正ポイントを中心に、制度の概要と実務上の留意点を整理します。

政令320/2025/NĐ-CPの位置づけと背景

ベトナムの税制は、法律で基本的な枠組みを定め、その詳細な運用を政令や通達で補足する構造を採っています。政令320/2025/NĐ-CPは、2025年に改正された企業所得税法を実務レベルで適用するための施行政令であり、従来の関連政令に代わる新たな基準として位置づけられます。

本政令では、課税所得の考え方、税率区分、税制優遇措置の判断基準に加え、資本譲渡や株式譲渡といった取引についての課税ルールが体系的に整理されています。これは、近年増加している外資による投資回収やグループ内再編を背景に、税務上の取扱いをより明確にする目的があると考えられます。

外国法人による資本譲渡課税の基本ルール

(1)原則的な課税方法の変更

政令320号により、譲渡者が外国法人である場合の資本譲渡については、課税方式が大きく変更されました。従来は、資本譲渡によって生じた譲渡益に対して20%の法人税を課す方式が採られていましたが、新たなルールでは、

譲渡価額に対して2%を課税する方式

が原則とされています。

このいわゆる「グロス課税方式」は、課税ベースを簡素化する一方で、取得価額や費用の有無にかかわらず税負担が発生する点が特徴です。そのため、実際には利益が出ていない、あるいは損失が発生している取引であっても、一定額の税金が課される可能性があります。

グループ内再編取引に対する例外規定

もっとも、すべての資本譲渡が一律に2%課税となるわけではありません。政令320号では、グループ内再編取引について、一定の条件を満たす場合には例外的な取り扱いを認めています。

以下のすべての条件を満たす場合、当該取引は2%課税の対象外とされ、引き続き譲渡益に対する20%課税が適用されます。

  • 再編後も、取引に関与する当事者の最終親会社が変更されないこと
  • 再編後も、ベトナム企業に対する直接または間接の持分関係が維持されること
  • 取引の実態として、実質的な所得が発生していないこと

(政令第320/2025/NĐ-CP 第12条第3項)

この例外規定は、単なる組織再編や持株構造の整理を目的とした取引について、過度な税負担が生じることを防ぐ趣旨と理解されます。ただし、「実質的に所得が発生していないかどうか」の判断は抽象的であり、税務当局との解釈の違いが生じやすい点には注意が必要です。

所得認識のタイミングに関する実務上の注意点

政令320号では、資本譲渡による所得認識のタイミングについて、「資本の所有権が移転した時点」と明示されています。これは、単なる契約締結日や代金支払日ではなく、実質的に持分の支配権が移転した時点を基準とする考え方です。

実務上は、以下のようなケースで判断が分かれることがあります。

  • 契約締結日と出資者名簿の変更日が異なる場合
  • 条件付契約や段階的な持分譲渡が行われる場合
  • 海外親会社間での譲渡で、ベトナム側の手続が遅れる場合

これらのケースでは、どの時点を「所有権移転」とみなすかによって、課税年度が変わる可能性があるため、契約書や社内決裁資料を含めた整理が不可欠です。

課税所得の算定方法(20%課税の場合)

グループ内再編などにより譲渡益課税(20%)が適用される場合、課税所得は次の算式により計算されます。

課税所得 = 譲渡価額 −(譲渡対象持分の取得価額 + 譲渡関連費用)
(政令第320/2025/NĐ-CP 第13条)

ここで重要となるのが、「取得価額」および「譲渡関連費用」の範囲です。特に、過去の再編や増資を経て取得価額が複雑になっているケースでは、その合理性を説明できる資料が求められます。また、仲介手数料や専門家報酬についても、資本譲渡との直接的な関連性が明確でなければ、費用として否認されるリスクがあります。

実務対応におけるチェックポイント

今回の政令改正を踏まえ、企業の実務担当者は、資本譲渡や再編取引を検討する際に、次の点を事前に確認することが重要です。

  • 当該取引が2%課税の対象となるか、20%課税の例外に該当するか
  • グループ内再編として説明可能な実態があるか
  • 所有権移転時点を客観的に示す資料が整備されているか
  • 将来的な税務調査において合理的な説明が可能か

特に外資系企業では、本社主導で再編が進められるケースが多く、ベトナム側の税務リスクが後追いで顕在化することも少なくありません。早い段階から税務面の検討を行うことが、リスク低減につながります。

まとめ

政令320/2025/NĐ-CPは、改正企業所得税法を具体化する重要な法令であり、資本譲渡課税の考え方を大きく転換する内容を含んでいます。特に外国法人による資本譲渡については、従来の「譲渡益課税」を前提とした実務が見直しを迫られる場面も想定されます。

企業としては、本政令の趣旨を正しく理解し、資本取引や組織再編を単なる手続としてではなく、税務リスクを含めた経営判断の一環として位置づけることが重要です。今後も関連通達や実務動向を注視しつつ、適切な対応を検討していく必要があります。

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