ベトナムでは、2026年8月24日に国会決議第43/2026/QH16号が公布されました。
この決議では、一定の条件を満たす個人事業者や企業などを対象として、2026年および2027年の個人所得税(PIT)・企業所得税(CIT)の負担を軽減する措置が定められています。
特に、年間売上高が一定規模以下の事業者について、納付すべき所得税額の30%を減額する点が大きな特徴です。
ベトナムで事業を行っている日本企業や、これからベトナムへの進出を検討している企業にとっても、現地での税負担を考えるうえで確認しておきたい制度です。
国会決議43/2026/QH16とは?
国会決議43/2026/QH16は、ベトナム国内で事業を行う個人や企業の所得税を軽減するために定められた国会決議です。
主な内容をまとめると、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 決議 | 43/2026/QH16 |
| 公布日 | 2026年8月24日 |
| 施行日 | 2026年8月24日 |
| 主な対象 | 一定の条件を満たす個人事業者・企業等 |
| 主な税目 | 個人所得税(PIT)、企業所得税(CIT) |
| 主な減税内容 | 納付すべき所得税額を30%減額 |
| 主な対象年度 | 2026年・2027年の課税年度 |
| 企業の売上基準 | 年間売上高100億VND以下 |
今回の制度は、すべての企業を対象として一律に税率を引き下げるものではありません。
対象となる事業者について、一定の条件を満たした場合に、実際に納付すべき所得税額を減額する仕組みとなっています。
企業は企業所得税(CIT)が30%減額
企業については、ベトナムの法律に基づいて設立された企業・組織のうち、一定の条件を満たす場合に企業所得税(CIT)が減額されます。
主な条件の一つが、年間売上高です。
2026年または2027年の年間売上高が100億VND以下の対象企業について、納付すべき企業所得税額の30%が減額されます。
| 項目 | 内容 |
| 対象 | ベトナムの法律に基づいて設立された企業・組織 |
| 売上高の基準 | 年間100億VND以下 |
| 対象となる税金 | 企業所得税(CIT) |
| 減額 | 納付すべきCIT額の30% |
| 対象年度 | 2026年・2027年 |
例えば、今回の減税を適用する前の企業所得税の納付額が1億VNDだった場合、単純計算では3,000万VNDが減額され、納付額は7,000万VNDとなります。
ただし、実際の税額は課税所得や既存の税制優遇などによって変わるため、すべての企業が同じ計算になるわけではありません。
既存の税制優遇を受けている企業はどうなる?
ベトナムでは、業種や投資地域などの条件によって、企業所得税について別の優遇制度が適用される場合があります。
今回の決議では、すでに企業所得税の優遇を受けている企業についても、一定の条件のもとで今回の30%減額措置を適用することが定められています。
つまり、既存の税制優遇を受けている企業については、まず既存の優遇措置を適用し、その後の企業所得税額を基準として今回の減額を考えることになります。
そのため、ベトナム進出企業が実際の税負担を確認する際には、今回の決議だけでなく、自社が利用している既存の税制優遇についても確認する必要があります。
個人事業者も個人所得税(PIT)が30%減額
今回の決議では、企業だけでなく、一定の条件を満たす個人事業者についても個人所得税(PIT)の減額措置が設けられています。
対象となる個人については、2026年および2027年の課税年度における事業活動に関して、一定の条件を満たす場合、納付すべき個人所得税額の30%が減額されます。
| 項目 | 内容 |
| 対象 | 条件を満たす個人事業者等 |
| 主な基準 | 年間売上高100億VND以下 |
| 対象となる税金 | 個人所得税(PIT) |
| 減額 | 納付すべきPIT額の30% |
| 対象年度 | 2026年・2027年 |
例えば、対象となる個人事業者の納付すべき個人所得税が1,000万VNDだった場合、30%にあたる300万VNDが減額され、納付額は700万VNDとなります。
ここでも、減額されるのは「売上高」ではなく「納付すべき所得税額」である点に注意が必要です。
年間売上高100億VND以下の判定はどうする?
今回の減税制度では、「年間売上高が100億VND以下」という基準が重要になります。
ただし、決議43/2026/QH16には、100億VNDの判定について細かな計算式までは規定されていません。
決議では、個人については2026年・2027年の各年の年間売上高、企業についても2026年・2027年の各年の年間売上高が、それぞれ100億VND以下であることを減税の条件としています。つまり、2026年と2027年を合算して判定するのではなく、各課税年度の売上高をそれぞれ確認することになります。
例えば、ある企業の年間売上高が次のようになった場合を考えてみます。
| 年度 | 年間売上高 | 30%減税 |
| 2026年 | 80億VND | 対象となる可能性あり |
| 2027年 | 120億VND | 対象外 |
この場合、2026年は年間売上高が100億VND以下なので、その他の条件を満たしていれば2026年分の企業所得税について30%減額の対象となります。一方、2027年は年間売上高が100億VNDを超えているため、2027年分については今回の減税の対象とはなりません。
また、注意したいのが「売上高」と「課税所得」は別のものだという点です。
今回の制度では、まず年間売上高が100億VND以下かどうかによって減税の対象となる企業かを判断し、そのうえで実際に納付すべき企業所得税額から30%を減額します。
したがって、
年間売上高 → 減税対象となるかの判定
課税所得・税額 → 実際の納付税額の計算
というように、それぞれ別の段階で考える必要があります。
例えば、年間売上高が80億VNDの企業で、各種控除や税制優遇を反映した後の企業所得税の納付額が1億VNDだった場合、今回の制度による減額は3,000万VNDとなり、最終的な納付額は7,000万VNDとなります。
なお、すでに別の企業所得税の優遇措置を受けている企業については、既存の税制優遇を反映した後の企業所得税額を基準として、今回の30%減税を計算することが決議に明記されています。
一方で、「どの収入を年間売上高に含めるのか」「特殊な事業形態の場合にどのように判定するのか」など、具体的な判定方法については、決議本文では詳細まで定められていません。
決議第2条では、この決議の詳細について政府が規定するとされています。そのため、実際に減税の適用を判断する際には、今後公布される政府の詳細規定や関連する税務規定もあわせて確認する必要があります。
企業の分割・分離による減税には注意
今回の決議では、減税を受けるために企業を分割・分離するようなケースについても一定の制限が設けられています。
決議の施行後に企業を分割・分離し、その結果として売上高100億VND以下の企業を作ったとしても、一定のケースでは今回の減税措置の対象外となります。
これは、単に企業を分割して売上規模を小さくすることで、減税の対象になることを防ぐための規定です。
そのため、企業再編などを行う場合には、今回の減税制度への影響についても確認する必要があります。
日本企業が特に確認したいポイント
今回の決議を見て、日本企業が最も気になるのは「ベトナムに設立した日系現地法人も30%減税の対象になるのか」という点でしょう。
今回の決議では、企業について「ベトナムの法律に基づいて設立された企業・組織」が対象として定められています。
そのため、日本企業がベトナムに設立した現地法人についても、売上高などの条件を満たしている場合には、今回の制度が関係する可能性があります。
ただし、日系企業だから自動的に30%減税されるという制度ではありません。
実際に対象となるかを確認する際には、次のような事項を確認する必要があります。
| 確認項目 | 確認する内容 |
| 法人の形態 | ベトナム法に基づいて設立された企業か |
| 年間売上高 | 100億VND以下となるか |
| 課税年度 | 2026年・2027年の対象年度に該当するか |
| 既存の優遇 | すでにCITの優遇措置を利用しているか |
| 企業再編 | 分割・分離などを行っていないか |
| 税額計算 | 実際の納付すべきCIT額はいくらか |
特に、これからベトナムに進出する企業の場合は、今回の減税だけを見て進出コストを判断するのではなく、法人設立時に利用できる税制優遇や投資地域、事業内容なども含めて検討することが大切です。
2026年・2027年の2年間が対象
今回の減税措置は、2026年および2027年の課税年度を対象としています。
そのため、ベトナムで事業を行っている企業にとっては、今後2年間の税負担を考える際に確認しておきたい制度です。
一方で、制度の適用には売上高などの条件があるため、企業規模が大きくなった場合などには対象から外れる可能性があります。
今後事業を拡大する企業では、単年度だけでなく、2026年と2027年の売上規模や税制優遇の状況をそれぞれ確認する必要があります。
まとめ
国会決議43/2026/QH16は、ベトナムで一定規模以下の事業を行う個人や企業の所得税負担を軽減するための制度です。
企業については、ベトナムの法律に基づいて設立された企業・組織で、一定の条件を満たす場合、2026年・2027年の企業所得税(CIT)の納付額が30%減額されます。
個人事業者についても、一定の条件を満たせば個人所得税(PIT)の納付額が30%減額されます。
今回の制度を確認する際には、「100億VND以下」という売上高の基準だけでなく、対象となる企業の条件、既存の税制優遇、課税年度などをあわせて確認することが重要です。
ベトナムに現地法人を設立している企業や、これからベトナム進出を検討している企業は、自社が今回の減税制度の対象となるかを確認するとともに、既存の税制優遇制度とあわせて税務上のメリットを検討するとよいでしょう。
本内容に関するご質問や詳細なご相談、ベトナム進出や現地法人の税務対応についてご不明な点等ございましたら、お気軽にお問合せください。






