ベトナム労働許可証(ワークパーミット)制度の見直しへ/外国人雇用に影響する主な変更点を解説

Ninh Bình

ベトナム内務省は、外国人労働者の就労に関する政令第219/2025/ND-CP号の改正案を公表しました。

現時点では正式施行前の段階ですが、今回の改正案には、ベトナムで外国人を雇用している企業や、駐在員・出向者を派遣している企業にとって重要な変更点が数多く含まれています。

特に注目されているのが、短期就労者に対する労働許可証(ワークパーミット)の取り扱いです。これまで労働許可証の取得が不要と考えられていたケースでも、今後は取得が必要となる可能性があります。

また、健康診断書の要件見直しや勤務地変更時の手続き、専門家・管理職に関する要件緩和など、企業の人事・総務担当者が押さえておきたい内容も盛り込まれています。

本記事では、ベトナム労働許可証制度の改正案について、日系企業への影響を中心に解説します。

今回の改正案で何が変わるのか?

まずは今回公表された改正案のポイントを一覧で確認してみましょう。

項目 現行制度 改正案
短期就労者 一定条件下で労働許可証免除 雇用関係と給与支払がある場合は取得が必要となる可能性
健康診断書 海外発行分の利用条件が厳しい 海外発行の健康診断書が利用しやすくなる見込み
勤務地変更 明確な規定なし 再発行事由として追加
管理職要件 実務経験3年以上 実務経験2年以上へ緩和予定
専門家要件 一定の経験要件あり 一部分野で経験要件を緩和予定

それでは、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

ベトナムの労働許可証(ワークパーミット)とは?

ベトナムで外国人が就労する場合、原則として労働許可証(Work Permit)の取得が必要です。

労働許可証は、外国人がベトナム国内で合法的に勤務するための許可証であり、駐在員や出向者、現地採用の外国人スタッフなどが就労する際に必要となる重要な手続きです。

ベトナムの労働許可証制度の基本的な仕組みや取得要件、必要書類については、当サイトのベトナム進出FAQでも詳しく解説しています。

「ベトナム進出FAQ(労働許可証・居住証・現地渡航について)」

ベトナム進出 FAQ (労働許可証/居住証/現地渡航について)

現行制度では、一定条件を満たす短期就労者や労働許可証免除対象者について、労働許可証の取得が不要となるケースがあります。しかし今回の改正案では、その免除制度の一部が見直される方向で検討されています。

短期就労者への影響

今回の改正案の中で、最も大きな影響が予想されるのが短期就労者に関する規定です。

現行制度では、年間累計90日以内の短期就労については一定条件のもとで労働許可証の取得が免除されています。そのため日系企業では、日本本社から技術者を派遣して設備据付や試運転、技術指導などを行う際に、この制度を活用しているケースも少なくありません。

しかし改正案では、以下の条件に該当する場合、短期就労であっても労働許可証が必要となる方向で見直しが進められています。

  • ベトナム法人との雇用関係がある
  • ベトナム法人から給与が支払われる

正式施行された場合、これまで「90日以内だから問題ない」と考えられていたケースでも、労働許可証の取得が必要になる可能性があります。

特に駐在員や出向者を受け入れている企業では、給与の支払主体や雇用契約の内容について改めて確認しておくことが重要になるでしょう。

健康診断書の取り扱い

外国人労働者がベトナムで労働許可証を取得する際には、健康診断書の提出が必要です。

しかし現行制度では、海外の医療機関が発行した健康診断書を利用するためには、ベトナムとの間で相互承認協定が締結されていることが条件とされています。

実際には、日本を含めそのような協定を締結している国はほとんどなく、多くの外国人労働者はベトナム到着後に改めて健康診断を受けなければなりませんでした。

今回の改正案では、この相互承認協定に関する要件が撤廃される方向で検討されています。

正式施行された場合、以下のようなメリットが期待されます。

  • 日本で受診した健康診断結果を活用できる可能性が高まる
  • ベトナム国内での再受診が不要になるケースが増える
  • 労働許可証取得までの準備期間短縮につながる

企業側・赴任者側双方の負担軽減が期待されています。

勤務地変更時の再発行手続き

勤務地変更に関する取り扱いも、今回の改正案で注目されるポイントの一つです。

現行制度では、労働許可証の紛失や破損、氏名や国籍、パスポート番号の変更、会社名の変更などが発生した場合に再発行手続きを行うこととされています。

一方で、勤務地変更については明確な規定がなく、企業によって対応が分かれるケースも見られました。

今回の改正案では、この勤務地変更が再発行事由として正式に追加されています。

例えば、次のようなケースでは再発行手続きが必要になる可能性があります。

  • ハノイからホーチミン市への異動
  • ホーチミン市からダナンへの転勤
  • 工場勤務から営業所勤務への変更

ベトナム国内に複数拠点を持つ企業では、人事異動時の管理方法について改めて確認しておくことが重要になるでしょう。

専門家・管理職要件の見直し

今回の改正案では、外国人管理職および専門家に関する要件緩和も盛り込まれています。

管理職(Executive Manager)については、これまで求められていた実務経験年数が3年から2年へ短縮される予定です。これにより、比較的若い管理職人材や次世代リーダー層の派遣がしやすくなる可能性があります。

また専門家(Expert)については、財務・科学技術・イノベーション分野において経験年数要件の撤廃が検討されています。

さらに、専門家として認められる対象分野についても拡大される見込みです。

  • 教育・研修
  • 文化・芸術
  • スポーツ

これらの分野が新たに追加される方向で検討されており、ベトナム政府による高度人材受け入れ促進の姿勢がうかがえます。

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日系企業が確認しておきたいポイント

今回の改正案はまだ正式施行前であり、今後内容が変更される可能性があります。

しかし、ベトナムで外国人を雇用している企業や駐在員を派遣している企業は、自社の運用が将来的に影響を受ける可能性がないかを確認しておくことが重要です。

確認項目 チェック内容
短期出張者・出向者 労働許可証免除の対象となるか
給与支払体制 給与の支払主体はどこか
労働許可証管理 取得対象者の範囲は適切か
人事異動 勤務地変更時の対応方法は整理されているか
法令対応 最新法令を継続的に確認できる体制があるか

現時点では改正案段階ですが、早めに自社の運用を確認しておくことで、制度変更にもスムーズに対応できるでしょう。

ベトナム労働許可証(ワークパーミット)に関するFAQ

Q1. ベトナムで90日以内の短期出張でも労働許可証は必要ですか?

回答:現行制度では一定条件を満たせば免除対象となります。

ただし今回の改正案では、ベトナム法人との雇用関係があり、ベトナム法人から給与が支払われる場合には、労働許可証が必要となる方向で見直しが進められています。

 

Q2. 日本で受けた健康診断書は利用できますか?

回答:改正案では海外医療機関の健康診断書を利用しやすくする方向で見直しが検討されています。

正式施行後の詳細な運用ルールについては、今後の発表を確認する必要があります。

 

Q3. ベトナムの労働許可証取得にはどれくらい時間がかかりますか?

回答:必要書類の準備期間を含めると、一般的には数週間程度かかるケースが多く見られます。

 

Q4. 労働許可証とビザは同じですか?

回答:異なります。労働許可証は就労資格、ビザや一時滞在証(TRC)は滞在資格に関する制度です。

 

Q5. 勤務地変更時にはどのような対応が必要ですか?

回答:今回の改正案では勤務地変更が再発行対象として追加されています。正式施行された場合、人事異動時に再発行手続きが必要になる可能性があります。

 

ベトナムの労働許可証制度について詳しく知りたい方へ

本記事では、現在公表されている労働許可証制度の改正案について解説しました。

ベトナムの労働許可証(ワークパーミット)の取得条件や必要書類、労働許可証免除制度については、以下の記事でも詳しく解説しています。

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まとめ

今回の改正案には、短期就労者に対する労働許可証要件の見直しをはじめ、外国人雇用に関する重要な変更が含まれています。

特に短期出張者や駐在員を受け入れている企業にとっては、給与支払方法や人事異動時の運用などに影響が及ぶ可能性があります。

現時点では改正案段階であり、今後内容が変更される可能性もありますが、ベトナムで外国人雇用を行う企業は最新情報を継続的に確認しながら、適切な対応を進めていくことが重要です。

本内容に関するご質問や詳細なご相談、ベトナム進出や現地法人の税務対応についてご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。