ベトナムでは、個人データ保護法および政令356/2025/NĐ-CPにより、企業が個人データを取り扱う際の管理体制や具体的な対応が定められています。その中でも、日本企業が実務上押さえておきたい制度の一つが「DPIA(個人データ処理影響評価)」です。
DPIAは、個人データの処理に伴うリスクを事前に把握し、適切な保護措置を講じるための重要な手続きです。採用活動や従業員管理、顧客管理など、日常業務で個人データを取り扱う企業にとっては、法令対応の基本となる実務の一つといえます。
本記事では、DPIAの概要や目的、対象となる事業者、記載内容、日本企業が確認しておきたい実務ポイントについて分かりやすく解説します。
DPIA(個人データ処理影響評価)とは
DPIA(Data Processing Impact Assessment)とは、個人データの処理によって生じる影響やリスクを評価する仕組みです。
企業や組織が個人データを取得・利用・保存・提供・削除する際に、その処理内容や想定されるリスクを整理し、必要な安全管理措置を検討します。ベトナムでは、こうした評価の結果を「個人データ処理影響評価報告書」にまとめ、個人データの処理状況やリスク、安全管理措置などを整理します。
ベトナム個人データ保護法および政令356/2025/NĐ-CPでは、個人データを処理するデータ管理者、データ管理・処理者、データ処理者などに対して、DPIAに関する書類の作成・保管が求められています。
DPIAを作成する目的
DPIAの目的は、個人データの処理に伴うリスクを事前に把握し、個人データ保護体制を適切に構築することです。
企業は、どのような個人データを取得するのか、どのような目的で利用するのか、どのような方法で保護するのかを整理し、情報漏えいや不正利用などのリスクを評価する必要があります。
また、DPIAを作成することで、自社における個人データの取扱状況を可視化できるため、社内ルールの整備や管理体制の見直しにも役立ちます。
DPIAの作成対象となる事業者
ベトナムでは、個人データ管理者、個人データ管理・処理者、個人データ処理者に対して、DPIAに関する書類の作成・保管が求められています。
DPIAは、企業や組織が自社の個人データの取扱状況や管理体制を整理し、処理に伴うリスクを確認するための制度です。そのため、ベトナム法人で個人データを取り扱っている場合は、まず自社が法令上のDPIAの対象となる事業者に該当するかを確認する必要があります。
また、個人データの処理を開始する段階からDPIAに関する書類を準備・保管することが求められているため、実際に処理を開始してから後追いで対応するのではなく、採用、人事、顧客管理などの業務で個人データを取り扱う段階から、自社のデータ処理状況を整理しておくことが重要です。
| 業務内容 | 主な個人データ |
| 採用活動 | 履歴書、応募書類、面接情報 |
| 人事・労務管理 | 従業員情報、給与情報、社会保険情報 |
| 顧客管理 | 顧客情報、契約情報、連絡先 |
| 営業活動 | 名刺情報、取引先担当者情報 |
| お問い合わせ対応 | 氏名、電話番号、メールアドレス |
DPIAは誰が作成する?
DPIAは、個人データを処理する企業や組織が、自社の個人データ処理について作成するものです。
政令356/2025/NĐ-CPでは、個人データ管理者、個人データ管理・処理者、個人データ処理者が、それぞれの個人データ処理影響評価書類を作成・保管することとされています。
例えば、ベトナム法人が従業員の氏名、住所、給与情報などを取得・管理している場合、そのベトナム法人自身が、自社における個人データの処理状況を整理し、DPIAを作成することになります。
DPIAでは、単に個人データを管理していることを示すのではなく、どのようなデータを、何の目的で、どのような方法で処理しているのかを整理し、その処理に伴うリスクや安全管理措置まで確認します。
DPIAでは何を評価する?
DPIAでは、個人データの処理内容や、それに伴うリスク、安全管理措置などを整理します。
主な記載事項は次のとおりです。
| 記載事項 | 内容 |
| 処理目的 | 個人データを取得・利用する目的 |
| 個人データの種類 | 取得・処理する個人データの内容 |
| 処理方法 | 取得、保存、利用、提供、削除などの方法 |
| リスク評価 | 個人データ処理によって想定されるリスク |
| 安全管理措置 | 技術的・組織的な保護対策 |
| 管理体制 | 担当部署や責任者などの管理体制 |
企業ごとに取り扱う個人データや業務内容は異なるため、自社の実態に合わせてDPIAを作成することが求められます。
DPIAには決められた様式がある
DPIAは、企業が自由な形式で作成する書類ではありません。
政令356/2025/NĐ-CPでは、個人データ処理影響評価の報告書について、「様式10(Mẫu số 10)」が定められています。
この様式では、提出者の基本情報や個人データ保護を担当する部署・人員の情報に加え、個人データの処理内容やデータの流れ、安全管理措置、法令遵守状況、処理に伴うリスクなどについて整理する構成になっています。
また、DPIAの提出書類には、様式10の報告書だけでなく、個人データの処理に関する契約・合意書や、個人データ保護に関する社内方針、手続き、規程、関連資料なども含まれます。
DPIAを作成する際には、様式に沿って必要事項を整理するとともに、実際の社内運用を裏付ける関連資料もあわせて準備しておく必要があります。
DPIAはいつまでに提出する?
DPIAの書類は、個人データの処理を開始した時点から作成・保管することが求められています。
さらに、作成したDPIAの原本1部は、個人データの処理を開始してから60日以内に、個人データ保護を専門に担当する機関へ提出する必要があります。提出方法は、オンライン、直接提出、郵送のいずれかとされています。
オンラインで提出する場合は、国家個人データ保護ポータル(Cổng thông tin quốc gia về bảo vệ dữ liệu cá nhân)を利用します。直接提出または郵送による手続きについては、公安省サイバーセキュリティ・ハイテク犯罪防止局(A05)が窓口となります。
提出されたDPIAについては、専門機関による確認・評価が行われ、要件を満たしているかどうかの結果が示されます。書類に不足や不備がある場合には、修正や補完を求められることがあります。
企業では提出期限だけを確認するのではなく、個人データの処理を開始する段階から必要な資料を整理しておくことが大切です。
DPIAは作成だけでなく保管・運用も重要
DPIAは、作成して提出すれば完了するものではありません。
作成した書類は、公安当局による検査や評価に対応できるよう、常に利用できる状態で保管しておく必要があります。
また、個人データの取扱方法や業務内容、社内体制に変更があった場合は、DPIAの内容も見直し、実際の運用と一致した状態を維持することが重要です。
日本企業が確認しておきたい実務ポイント
日本企業では、採用活動や従業員管理、営業活動、顧客管理など、複数の部署で個人データを取り扱っています。そのため、DPIAは法令対応のためだけに作成するものではなく、自社の個人データ保護体制を整理・管理するための実務資料として活用することが大切です。
また、日本本社との情報共有やクラウドサービスの利用などにより、個人データを国外へ移転する場合は、DPIAとは別にDB-DTIA(国外データ移転影響評価)への対応が必要となる場合があります。自社の個人データの流れを整理し、それぞれの制度への対応状況を確認しておくことが望まれます。
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まとめ
DPIA(個人データ処理影響評価)は、個人データの処理に伴うリスクを把握し、適切な管理体制を構築するための重要な制度です。ベトナムでは、個人データを処理する事業者に対してDPIAの作成・保管が求められており、公安当局による確認や評価の対象となる場合もあります。
日本企業においても、人事・採用・営業・顧客管理など、多くの業務で個人データを取り扱っています。法令への対応に加え、自社の個人データ保護体制を継続的に見直すための仕組みとしてDPIAを活用し、適切な運用体制を整備することが重要です。
MEIKEIでは、ベトナム個人データ保護法に関する実務対応についてサポートいたします。ベトナム個人データ保護法について、質問事項等ございましたらお気軽にお問い合わせください。







