- ベトナム進出における会社形態(法人形態)について -
それぞれの特徴を捉え、最善の進出形態をご検討ください
外資がベトナムに駐在員事務所ではなく、現地で法人登記を行い会社を設立する場合、いくつかの会社形態があります。今回はそのベトナムの会社形態について、それぞれの特徴などをご紹介して行きたいと思いますので、皆様のベトナム進出の参考として頂ければと思います。
ベトナムで会社を設立する際の形態は、以下の3つです。
1. 有限責任会社(1名出資型)
2. 有限責任会社(複数出資型)
3. 株式会社
会社形態 | 出資者数 | 特徴 |
有限責任会社(LLC) 一人出資型 |
1名*独資 | 出資者である法人 または 個人の100%独資の会社 |
有限責任会社(LLC) 複数人出資型 |
2名以上 | 外資規制(資本比率)のある業種で 合弁会社を設立することが多い |
株式会社(JSC) |
3名以上 | 設立手続きが複雑かつ、 事業開始後の運営管理コストが高い |
1. 有限責任会社(1名出資型)
日本企業がベトナムに進出する際の会社形態として、最も多い形態がこの1名出資型の有限責任会社です。日本の親会社、または日本の代表取締役などが出資者となり、100%資本を出資します。いわゆる独資の法人形態ですので、ベトナム法人設立業務も最も簡単であり、ほかの2形態に比べても複雑ではありません。
法人登記が完了して 企業登録証明書が発給された後から90日以内に出資を実施する必要があります。(資本の)持分の一部か全部を他者へ譲渡することも可能ですが、譲渡後に出資者が2名以上になる場合は、次の「有限責任会社(複数出資型)」か「株式会社」への法人変更手続きが必要となります。 また法人設立後に第3者による出資を受ける場合は、結果的に出資者が複数となりますので、同様の法人変更手続きが必要になります。
2. 有限責任会社(複数出資型)
ベトナム進出の二つ目の会社形態として、「有限責任会社(複数出資型)」があります。どういった場合にこの会社形態を選択するかですが、投資する業界によっては、ベトナムで「外資規制」が掛けられている場合があります。最近は外資規制も少しずつ緩和され、多くの業界の企業様が独資(有限責任会社 1名出資型)にてベトナムに進出できるようになったものの、現地のローカル企業との合弁(現地企業の資本を51%以上入れないといけない等)でないといけない業界もあり、そのような場合は、この複数出資型による有限責任会社や株式会社を選択する企業様もあります。またローカル企業ではなくとも、同じ日本企業同士が複数社で出資して、ベトナムに会社を設立する場合にも この会社形態が当てはまります。
この会社形態のメリットとして、ローカル企業との合弁にすることで、「外資規制の投資案件であっても投資許可が下りる」、「現地事業展開におけるノウハウが得られる」、「国内マーケットの販売展開が早い」、また複数企業と合同出資することによって「資本負担を軽減できる」などのメリットもある反面、迅速な経営判断が必要な時に判断が鈍る、現地の法人経営に自社の特色が出せない、合弁先とのトラブルなど、デメリットもあるのは事実です。
3. 株式会社
ベトナム進出の三つ目の会社形態として、「株式会社」があります。ベトナムでの株式会社の設立(現地法人登記業務)は、有限責任会社に比べて非常に複雑で、手間と時間が掛かります。もちろん株式発行も可能であることから、合弁先のローカル企業などから、株式会社設立を提案されることもあるかもしれませんが、株式会社設立に伴う法人登記プロセス、提携先との契約条件(提携条件や役割分担)、事業開始後の会社のマネージメント方法などについても、細かくチェックした上で交渉を進めた方がいいでしょう。取締役会、監査役会(*一部条件による)、株主総会の設置も必要となり、有限責任会社よりも会社運営が煩雑になることは間違いありません。
また出資者は3名以上が必要になります。設立時の株主が、第3者の株主に対して 株式を譲渡することも可能で、設立後3年以降であれば、基本的に株主総会の承認なくとも譲渡できるようになるので、設立時の株主を誰にするのかよく吟味した方がいいでしょう。
以上、ベトナムの会社形態(法人形態)とそれぞれの特徴についてご紹介いたしました。
今一度、内容をまとめますと、 現地に進出する日本企業は、有限責任会社(1名出資型)の設立が最も一般的で、複数出資型の有限会社と合わせると、日系企業全体のおよそ80%と言われております。有限責任会社は、法人登記業務や設立後の経営管理も比較的容易です。
現地のローカル企業と合弁会社を設立する場合など、有限責任会社以外の選択肢として 株式会社がありますが、有限責任会社(1名出資型)での進出と違って、デメリットや注意点も多く、選択した会社形態によってどのようなトラブルが起こりうるのかもよくリサーチした上で検討する方がいいでしょう。
またその他のベトナム進出形態は、現地支店(*指定業種、親会社への損金算入可能)、駐在員事務所(*全業種可、営利活動不可、親会社への損金算入可能)、「プロジェクト企業」や「建設分野の請負」といった形態のございます。当社では法人設立だけでなく、駐在員事務所の設立ご支援も可能です。ぜひご相談くださいませ。
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