ベトナムでは、2026年7月1日から新たな個人所得税制度が施行されることに伴い、2026年6月30日に財務省より通達第87/2026/TT-BTCが公布されました。
本通達は、個人所得税法(109/2025/QH15)および政府政令第253/2026/NĐ-CPの内容を具体的に運用するための実務ルールを定めたものであり、扶養控除の適用要件や必要書類など、企業の給与計算や人事管理に関わる事項が明確化されています。
特に、被扶養者の所得基準額の見直しや、扶養控除の適用に必要な証明書類の整理は、多くの日系企業にとって確認しておきたいポイントです。
本記事では、通達87/2026/TT-BTCの概要と改正ポイント、日本企業が実務上確認すべき事項について分かりやすく解説します。
通達87/2026/TT-BTCとは
ベトナムの個人所得税制度は、「法律」「政令」「通達」の3つの法令によって構成されており、それぞれ異なる役割を担っています。
個人所得税法(109/2025/QH15)が制度の基本的なルールを定め、政令253/2026/NĐ-CPがその施行方法や詳細を規定しています。そして、通達87/2026/TT-BTCでは、扶養控除の判定基準や必要書類など、企業や納税者が実務で対応するための具体的な運用方法が示されています。
ベトナム個人所得税制度を構成する3つの法令
| 法令 | 公布日・施行日 | 役割 | 主な内容 |
| 個人所得税法(109/2025/QH15) | 2025年12月公布2026年7月1日施行 | 法律(基本ルール) | 個人所得税制度全体の見直し、所得区分の整理、扶養控除の見直しなど制度の基本を規定 |
| 政令253/2026/NĐ-CP | 2026年6月30日公布2026年7月1日施行 | 政府政令(施行規則) | 個人所得税法の施行方法や対象範囲、控除制度などを具体的に規定 |
| 通達87/2026/TT-BTC | 2026年6月30日公布2026年7月1日施行 | 財務省通達(実務運用) | 扶養控除の所得基準や必要書類、外国人居住者の取扱いなど、企業実務に必要な運用ルールを規定 |
このように、通達87は制度そのものを新たに定めるものではなく、企業が給与計算や扶養控除の手続きを適切に行うための実務上の指針となる法令です。そのため、人事・経理・給与担当者は、法律や政令とあわせて通達87の内容も確認しておくことが重要です。
通達87/2026/TT-BTCの企業が確認すべき実務ポイント
① 被扶養者の所得基準額の見直し
本通達では、扶養控除の対象となる被扶養者の所得基準額について、具体的な判定基準が示されています。
被扶養者は、すべての所得を合算した年間の平均月収が300万VNDを超えない場合に扶養控除の対象となります。これは従来の基準から引き上げられたものであり、扶養控除の対象となる範囲が拡大されました。
また、納税者には被扶養者の所得を正確に申告する責任があり、企業においても扶養控除の申請内容を適切に確認・管理することが重要です。
→ ベトナム扶養控除/被扶養者の所得基準300万VNDとは?対象者や判定方法を解説
② 扶養控除に必要な証明書類が明確化
本通達では、扶養控除を受ける際に提出・保管すべき証明書類についても具体的に整理されています。
例えば、
- 子どもの場合は出生証明書や養子縁組に関する書類
- 配偶者は結婚証明書など婚姻関係を証明する書類
- 父母は親子関係を証明する書類
など、それぞれのケースに応じて必要書類が定められています。企業は、提出書類に不足がないかを確認し、適切に保管することが求められます。
→ ベトナム扶養控除に必要な証明書類一覧/配偶者・子・父母・外国人別に解説
③ 外国人居住者の扶養控除
本通達では、外国人居住者が扶養控除を適用する場合の証明書類についても規定されています。
海外に居住する家族を被扶養者として申請する場合は、本国の管轄機関が発行した親族関係を証明する公的書類が必要となることがあります。また、提出書類によっては翻訳や認証などの手続きが求められる場合もあります。
外国人従業員が在籍する企業では、必要書類や申請手続きを事前に確認し、適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。
特に日本本社からの駐在員については、日本で取得する証明書類が必要となるケースもあるため、早めに準備を進めることが望まれます。
→ ベトナムにおける外国人居住者の扶養控除/適用条件や必要書類を解説
④ 所得支払機関(会社)の管理義務
本通達では、所得支払機関である企業にも、扶養控除に関する証明書類を適切に管理する責任があることが示されています。
企業は、従業員から提出された扶養控除に関する書類に不足がないかを確認するとともに、税務当局から提出を求められた場合に対応できるよう、適切に保管しておく必要があります。また、扶養控除の登録内容についても定期的に見直しを行い、最新の情報に基づいて管理することが重要です。
特に、人事・給与・経理部門が連携し、扶養控除の申請から書類保管までの運用ルールを社内で整備しておくことで、税務調査や法改正にも円滑に対応しやすくなります。
日本企業が対応すべきポイント
通達87/2026/TT-BTCへの対応では、法令の内容を理解するだけでなく、自社の給与計算や人事管理の運用が最新の制度に対応しているかを確認することが求められます。ベトナムで従業員を雇用している日本企業は、次のポイントを確認しておきましょう。
| 確認項目 | 確認内容 |
| 被扶養者の所得基準 | 扶養控除の判定基準が最新の基準に対応しているか確認する。 |
| 扶養控除の必要書類 | 被扶養者ごとに必要な証明書類が揃っているか確認する。 |
| 外国人従業員への対応 | 海外で発行された証明書類の取得方法や、翻訳・認証の要否を確認する。 |
| 書類の管理体制 | 扶養控除に関する書類を適切に保管し、税務調査に対応できる体制を整える。 |
| 社内運用の見直し | 人事・給与・経理部門で情報を共有し、最新の法令に沿った運用となっているか確認する。 |
通達87では、扶養控除の適用条件や証明書類など、企業の実務に直結する内容が具体的に示されています。制度変更に適切に対応するためにも、社内の運用状況を一度確認し、必要に応じて申請手続きや書類管理の方法を見直しておくとよいでしょう。
まとめ
通達87/2026/TT-BTCは、個人所得税法(109/2025/QH15)および政令253/2026/NĐ-CPの内容を実務で運用するための具体的なルールを定めた財務省通達です。特に、被扶養者の所得基準額の見直しや扶養控除に必要な証明書類、外国人居住者への対応などは、日本企業の人事・給与・経理担当者にとって確認しておきたいポイントといえます。
今後も関連法令や実務運用は更新される可能性があるため、最新情報を継続的に確認しながら、自社の給与計算や書類管理体制を適切に見直していくことが大切です。MEIKEIでは、ベトナムの法令改正や実務に役立つ情報を今後も分かりやすく発信していきます。
本内容に関するご質問や詳細なご相談、ベトナム進出や現地法人の税務対応についてご不明な点等ございましたら、お気軽にお問合せください。
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